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トイレのピエタのjunのネタバレレビュー・内容・結末

トイレのピエタ(2015年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

最初から最後まで息苦しい。

生きたいけど生きられない、
生きたくないのに死ねない、
どちらの境遇も苦しくて、でも必死に生にしがみついている。ふたりが愛おしくて切ない。

死を前にして、人生を振り返り、生への未練がじわじわわいてくるやるせなさも。
生きていたくないと思えるほど辛い境遇も耐えるしかないしんどさも。
どちらにも共感できる要素があって、ふたりの投げやりな生き方や言葉が刺さって苦しい。

だけど、短い時間の中で真っ直ぐぶつかりあった「生」が少しだけ柔らかい光を灯す。
ほんのちょっとだけ、ふたりに優しい時間が流れる。
プールのシーンは優しくて苦しい。
そして、ものすごく美しい。

彼が死ぬまでの間に描きあげたトイレのピエタは彼が感じた「生」の光だったんだろうなぁ。
「俺、いま、生きてます」
ピエタを見た彼女にはどう伝わっただろう。ただでさえ辛い境遇なのに、心を許した相手もいなくなってしまった。どんなに辛くても生きていかねばならない。
私が彼女なら、生への気力は尽きてしまうなぁ。絶望ってそういう感じかな。
彼女の幸せを切に願ってしまう。
彼女のその後もわからない、スッと終わりを迎える映画に色々と感情が荒らされて、エンディングのピクニックで泣かされる。

人生は綺麗には終わらないものね。
淡々と、生きる、をするしかないのかな。
だけど、小さな優しい光を見逃さないように、大事にできるように、生きていたいと思える作品。
すごく考える映画。私はとても好き。
DVDも買って何度も観てます。
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