ちろる

トイレのピエタのちろるのレビュー・感想・評価

トイレのピエタ(2015年製作の映画)
3.7
この「トイレのピエタ」手塚治虫原案というのは後から知った。
手塚も死ぬ前にピエタを見に行っていたのと、死因がこの主人公と同じスキルス性胃がんだったので、そこからインスパイアされたのだそう。

死にたくても死ねない人もいれば、
生きたくても死んでいく人もいる。
この主人公はというと、うまい生き方がわからないまま、スキルス性胃がんを患って余命を宣告されてしまう。
感動的な闘病ものと違って、主人公は自分の死を目の前にしても何も行動を起こさない。
自らの手で人生を切り開こうと努力しなかった男が、死を目の前にすればきっとこんなものなのだろう。
「どうせ俺なんかこんなもん。」
(誰も俺のことなんか必要としてないし)と、自分自身から逃げて、逃げて、逃げ続けて到着したのが殺風景な病室だったとはやりきれない。
余命を宣告された人間にとって病院は人生の終着点のように見えるけれど、意外なほどの「生きる」原動力が転がっていた。
その転がし方はとてもさりげなくて、感動的でもなかったから何となく安心して見られた。
主人公が、なぜ絵描きを辞めたのか、なぜ両親から距離を置くのかがわからなくて共感するには至らなかったけれど、彼が最後に死ぬために選んだ生き方には共感した。
(もっと死に際の苦しみをリアルに描いて欲しかったけど)

ぬぼっとした野田くんは、演技上手くないし顔も好みではないけど、この役はハマってたと思う。
脇を固める役者が豪華なもんで、作品はそこで締まっていたのかもしれない。
特に杉咲花ちゃん、壊れそうでギリギリに生きてる少女の役が本当に似合う。
手を出したら犯罪になっちゃうロリな雰囲気も、プールの中で「パンツ見たい?」とか言っちゃうこの作品のマイの立ち位置としては良かった。
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