ルーという男についての情報は少ない
主人公のパーソナルな情報が少なくなると、生きた人物としてよりも象徴としての色合いが濃くなり映画のテーマそのものを体現した存在として映る
(演じたジェイク・ギレンホール自身ルーを「歩くメタファー」と表現している)
「成功の為なら手段を選ばない」
事実として企業の社長等の所謂「成功者」にはサイコパスが多いという
普通の人間が他者に対しての想像力(思いやり)から、考えがよぎる事はあっても選ぶことを躊躇ってしまう「最適な判断」を彼らは「成功」の大儀のもと選ぶことが出来るのだそうな
完成した(あるいは亡くなった)成功者を人格者として社会が捉えがちなのは誤った認識ってことだ
この映画は未来の成功者たる主人公ルーの成功への過程を「リアルタイム」で描いていると感じた
故に偉人の伝記映画等に見られる「結果成功するのだから」に引き摺られてエピソードを美談たらしく描く愚は犯さない
未だサイコパスのど真ん中
「報道スクープ専門の映像パパラッチ」という職業がもつ軽薄さや不道徳さも手伝って、唯ひたすらにおぞましく不気味にスリリングに描かれている
(ネットで得た知識を自分の言葉の様に話すというキャラ造形が白眉)
だのにルーのトントン拍子に上手くいくサクセスストーリーに痛快さすら覚えてしまう
思えば映画を観る動機として登場人物が僕達が出来ないことをやってのけてくれて、そこに痺れる憧れるってのはあるのだから当然か
他者を成功の糧としてしか思っていない資本主義の申し子を生々しく演じたジェイク・ギレンホールは元々ファンという贔屓目を差し引いても何も言うことはない
しいて言えば夜行性感がキモくて素晴らしい