阪本嘉一好子

ボーダレス ぼくの船の国境線/ゼロ地帯の子どもたちの阪本嘉一好子のネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます


ペルシャ映画ペルシャ映画の不思議なところは最初の20分ぐらい何が起きているのかわからず、ウカッリすると飽きてしまうところにある。ペルシャ映画の一般論ではあるが、私はこのことを大抵経験している。この映画もまさしくその通り。少年が難破船に向かっていって、そこで自給自足生活をするが、なんともいえなく実用的であり、効率的な生活をしている。例えば、魚を釣って、それを割いて塩をつけて日干しにする。そして、それを食べたり物々交換にしたりして、生計を立てている。しかし、ここまでだとこれがこのあとのストーリーとどう結びついていくかは見当がつかない。

この映画のシーンでアメリカの兵士(アメリカ英語のような音を持った、アメリカ人設定だと思う。)が銃を捨てて家族に会いたいがために命乞いをするところが人間らしくていい。兵士は胸にいれておいた家族の写真を(奥さんと二人の子供)眺めて泣いている。この兵士にこの少年と侵入者である少女とその子供(?)を殺すことができないのは明確だ。
最後に少年は手に入れた、というより、手に入れるのに苦労をした人とのふれあいをまた無くしてしまうが、彼だったらきっと何か他のことを手に入れることができるかもしれないと思った。最後のシーンでこの少年が何をしだすか見当ができないが、きっと行動に移すということを観衆に知らせて終わりにしている。
この少年は、サバイバルスキルがあるだけでなく、 水を渇望しているアメリカ兵士にも水を与えようとするように人にも情けをかけることを知っている。というより、彼の生まれ育った生活の中のどこかで情けを学んできている少年だ。この映画のポイントはなんだろう?戦争の恐ろしさは人殺しをしあうだけでなく、人の心を傷つけてしまうということ?この少年に笑いが全くなく、厳しい目をしている。戦争というものが彼に笑いを与えていない。