ゆかちん

ミス・シェパードをお手本にのゆかちんのレビュー・感想・評価

3.0
英国作品らしくて良かった。
皮肉や英国ユーモアを交えてるのがまた笑。
悲惨な部分も飄々と描くから面白いね。
そして、決して恵まれた話ではなく、幸せか不幸せかはわからないのだけど、なんとなく、ああ、なんか良かったな〜ってなるというか、人生色々やなぁ〜救われてるといいなぁ〜自分に対して赦されていたらいいなぁ〜ってなる感じに、なんとも言えない良さがありました。



ロンドン北部の町カムデンに引っ越してきた劇作家ベネット(アレックス・ジェニングス)は、通りに停められたおんぼろ車の中でミス・シェパードという女性(マギー・スミス)が生活していることを知る。
彼女はここで気ままに暮らしており、近所の住人たちから食事を差し入れをもらってもお礼を言うどころか悪態をつく始末。
ある日、ミス・シェパードは路上駐車を咎められ、見かねたベネットはしばらく自宅の敷地に車を置くことを提案する。ベネットは一時的なつもりだったが…。。。


映画には、作家ベネットとその分身が登場する。
一人は作家としてミス・シェパードを観察するベネットで、もう一人は人間として普通に生活し、ミス・シェパードや近所の人たちと接するベネット。

本体は普通に生活してる方なのかな?
一人暮らしだし作家だから独り言が多く、ある意味自分と対話してるみたいな。
劇作家として自分を分裂させ、いろいろな分析をして自分にツッコミを入れるみたいな台詞があって面白い。
こういう形、面白いな笑。

あと、ほぼ実話ってのもすごい!
15年てすごいな。。
ちゃんと、実際と違う言葉を発した時は「そんなことは言ってない」と本体ベネット補正が劇中でかかるのも面白いw

そんな派手なことはなく、事実に基づくだけに淡々とした話なんだけど、ミス・シェパードの人生が少しずつ明らかになるのは興味深かった。

ホームレスという社会問題を背景に、ミス・シェパードと作家として人間としてのベネットとの関わり、ホームレスとリベラルの滑稽な関係が示唆する様々な含み…。。
公正さと寛容さ、そして、嫌々ながら嫌われる貧しい人々を助けること、とは。

そして、最後にベネットは、
「私が学んだのは、そして恐らく彼女が私に教えてくれたのは、自分が書く物語に自分自身を入れ込む必要はない、そこに自分自身を見出すことだ。」
と語り、自分の人生を歩み出す。
隠してたけど、ボーイフレンドを作って。

ここから邦題になったんだろけど、微妙かな笑。



ミス・シェパードの最期。
ずっと嫌がってた施設に行ってお風呂に入り、綺麗になって。
でも、その施設では自分の過去を知る人がいたから逃げてきて。

バンに戻ってきて、ベネットに「手を握って。綺麗だから。」という。

なんか、そこがとても切なかった。

彼女はそれで旅立ってしまったのだけど、最後にベネットと手を握り合ったことは彼女なりに幸せだったのかなぁ。

本当はもっと色んな人と手を握ったりしたかったのかなぁ。

ベネットは同性愛者で、それを隠しつつ生きてきたけど、ミス・シェパードとのことで自分らしく生きることにしたんだなぁと。

ベネットの母が段々老いて認知症になり、施設に入るところも、なんか切ない。

なんか、そういう介護問題とか色々触れてるね。


ジム・ブロードベント出てきた!
英国作品にこの人ありやな。
結構悪い役。てか、この人、ミス・シェパードは悪くないと全部わかってるのにお金巻き上げてるの悪すぎるやん。

カメオ出演に、ドミニク・クーパーやジェームズ・コーデン。
豪華!!

まあ、主演がマギー・スミスやしな。
めちゃ良かった〜。
コミカルにもシリアスにも対応。
ミス・シェパードの哀愁も悲しみも含めた厄介ばあさんを見事に演じてた。
品格があるから、フランス語堪能とかピアノで将来有望だったて言われても、そうやろなぁってなる笑。
車椅子に乗って気高く施設のバンに乗せられるとこ良かった笑笑。

ベネット役に、アレックス・ジェニングス。
いかにも英国人でめちゃ良かった!
よく知らなかったけど、舞台とかで活躍してはる人みたい。
分裂したベネットの感じとか、ミス・シェパードの相手してる感じが良い。
この人も品格ありで良いな。スラッとしてはる。

近所の人たちも良かった。
嫌々とはいえ、バンを停めてても追い出さないとか、食べ物渡すとか、あと、公の福祉のこととか、そうなんや〜てなった。
ミス・シェパードに対して文句言いながら、最後はなんか寂しいねってなってる感じが、なんか良かったな。


汚らしいのも勿論あったけど、建物や街の雰囲気は可愛かったし、
人情というのか、しゃーなしの面倒を見てあげる謎の関係で、他人の人生に接するという不思議なケミストリーがあって良かった。


最後の創作のように、ミス・シェパードが無事、天国で過去を救われてたらいいな。

でも、なんか、軽くコミカルに描いてるけど、やっぱどこか悲しいというのか、切ないというのか。
そういうのがある。

映画としては、もっと派手に盛り上げることやミス・シェパードの内面とか過去をドラマチックに描くことは出来ただろうけど、そこは淡々と飄々と。
それもまた良いなとは思った。
(人によったら物足りないだろけど)


あ、ラストの方でリアルベネット、つまりご本人がチラッと参加してたね笑。
ゆかちん

ゆかちん