Netflixで鑑賞。
大人のちょっと変わった不思議なファンタジー…と思いきや、
"ほとんど本当のお話"と言う驚きのストーリー。
レディこと、ミス・シェパード(マギー・スミス)の奇妙な人生と、
劇作家のアラン・ベネットとの不思議な縁の物語です。
思い掛けない事故から、ミス・シェパードの運命の歯車が狂い始めます。
彼女は家を持たず、車中で寝起きし、着の身着のまま車の停泊場所を移動しながら暮らしていました。
もちろん、服も、身体も、顔も汚れ、
まるで浮浪者の様な身なりなのですが、
パウダーを身体にはたくくらいのレディーとしての嗜みは忘れない気品のある出で立ち、
そして、自分なりの拘りを持った生活をしていました。
(それが決して、全ての人を不快にさせない訳では無いのですが)
誰もが"自分の家の前では止まってくれるな!"と心から願っていました。
不幸にもレディの"お告げ"の元、停泊場所に選ばれてしまった家の人々は、
異臭に抵抗しつつも、無下には出来ないと言う道徳心からレディに笑顔で最低限の優しさを見せ接します。
音楽を聴くのを嫌がるレディの次なる"お告げ"の元、
彼女のお引越しが行われ、
胸を撫で下ろし笑顔で手を振る元停泊場所だった家の住人、
そして次なる被害者が選定されます。
ベネットはと言うと、優しさからか、ミス・シェパードへの興味からか、
彼女の頼みを断れず、家のトイレを貸したり、話しかけたりします。
そんな縁から、レディはベネットを心の何処かで信頼し、
いつしかベネットの家のスペースを借りて車の停泊場所として暮らして行きます。
ベネットも、ミス・シェパードを題材に台本を書きたいと言う想いから、
快く間借りを許すのでした…。
ストーリーが進む毎に、謎だったミス・シェパードの身の上(過去)が明らかになって行くのが、
なんとも面白くも切ない気持ちにさせられます。
彼女は本当は不幸だったのだろうか?
幸せだったのだろうか?
束の間でもミス・シェパードが見せた笑顔が、
きっと彼女の本音を物語っていたのだと思います。
ベネットも長く独り暮らしをし、舞台小説を書き続け、老いて行く母を看る日々に、どこかで心の病を患っていたのかも知れません。(2人のベネット)
レディの存在が、少なからずも彼の人生に影響を与え、
日々に明るさを感じる事が出来たのではないでしょうか。
気難しく頑固で、大好きな明るいイエローに自宅(バン 車)を塗り替えずにはいられないミス・シェパード。
マギー・スミスの渾身の演技がミス・シェパードの数奇な運命を鮮やかに蘇らせる事の出来た力作です。