垂直落下式サミング

ブラックパンサーの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ブラックパンサー(2018年製作の映画)
3.5
漆黒の豹戦士ヒーローブラックパンサーが王としての通過儀礼を終える物語。
シビルウォーで初登場したときはメチャクチャ格好よかったが、よく考えたらこの人はまだ正式に国王の地位を継いでいない王子様なので、自分から主体的には何も為し遂げていない。周囲に甘やかされて育ったお坊ちゃんである。
対して敵のキルモンガーは、列強国に虐げられてきたアフリカ500年の怒りを背負って立つような豪傑であり、髪型がノンスタイル井上と同じアシンメトリであるというハンディキャップを背負いながら、19歳でアメリカ海兵隊に入隊し、その奨学金でMITを卒業し、シールドの特殊工作員となったマッチョ&インテリジェンスな経歴を持つ叩き上げ。万能鉱石で作った秘密兵器をドヤ顔で出してくるボンボンどもとはワケが違うのである。
にしても、チャドウィク・ボーズマンの演じた役の遍歴がすごいな。ジャッキー・ロビンソンに、ジェームス・ブラウンに、マーシャル判事ときて、今回はスーパーヒーロー映画の主役。しかも歴史的な政治改革を決心する王子様の役。偉人ばっかり。
しかしながら、映画としては平均的な仕上がり。アクションが妙に小ぢんまりとしていて、肉体的な躍動感がシビル・ウォーのときよりもグレードダウンしている。マーベルヒーローシリーズのアクションが他と比べて当然高水準なのは疑いようもないのだけど、本作は背景にまでCGを使いすぎて、オールグリーンバックで役者が演技している様子が想像される平凡な絵作りにみえた。
「喜びとは分かち合うことだ」ってテーマの前向きさは疑いようもないけれど、絵的な新鮮味が少なくて残念。やはり長編監督第三作目がビッグバジェットSF超大作なのは、気鋭ライアン・クーグラーと言えど少し荷が重かったのではないか。
もちろん、こういった内容の黒人ヒーローが主役の映画が世界的にヒットするのはいいことで、描かれているテーマやコンセプトそれ事態は素晴らしいと思うのだけど、映画として満足度が高かったかどうかは別問題だからねってハナシだ。
ちゃんとワカンダ語があるのに、「フォーエバー!」ってのもな。なんかダサかった。