教授

アベンジャーズ/エンドゲームの教授のネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

テーマ考察
主題<ヒーローとは何か>

ヒーローとして生きることを選ぶ力は、誰しもが持っている。

ヒーローとは、スーパーパワーを持つ者のことではない。
ソーの母親の言葉は、ヒーローという存在を現実に落とし込む。
“ヒーローとは、ありのままを受け入れること。なりたいように生きなさい”

スタン・リー
“困っている人に手を差し伸べられる。それこそが真のスーパーヒーローである”

象徴的ショット1…盾を割られても尚、大軍に立ち向かうキャプテンアメリカ

象徴的ショット2…自分を犠牲にしても、人々を守るため指を鳴らすアイアンマン
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1.過去の過ちへの復讐は何も生まない

リベンジは、個人的な理由による復讐。
すでに石を破壊し、今後力を振るう気のないサノスの首を取ったところで、何にもならなかった。

新たな復讐を呼びこそすれ、仇を取った者たちの傷が癒えることもない。
罪を犯した者は裁きを受けるべきだが、仇討ちのため不法に命を取ることは、正義ではない。
もはや戦いとは言えず、勝利でもない。

アベンジは、正義感による悪への報復という意味合いを持つ。
サノスの計画を崩し、最後は再び脅威として現れたサノスに「正しく勝つ」戦いを展開する。
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2.守るために武器を持つべきか

「アベンジャーズは、報復しかできない」
→もっと保守的に、防衛兵器を世界に配備すればよいのではないか。
→しかし防衛が行き過ぎる可能性は?兵器が悪用される可能性は?

抑止力として核を持つべきか、みたいな議論に似ている。正解はない。議論を続けていくしかない。
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3.変えられない過去の自分が誘い寄せる、安定した不変の未来に抗う勇気

“私は絶対なのだ”
…サノス=物事の当然の帰結として、避けられない運命の象徴。

“ならば、私はアイアンマンだ”
…(とてもヒーローという柄ではない私だが、)アイアンマンを名乗る=ヒーローという生き方を選ぶ宣言。

トニーは生まれながらのヒーローではない。
むしろ武器商人として世界に武器を売ってきた、平和を望まない人間だった。
そんな彼がアイアンマンを始めたことは、誰しもが過去に運命付けられず、生き方を選択し得る可能性を示す。

「ピースはやめろ、世の中が平和になったら私は職を失う」

「やっとわかったんだ、何をすべきか。
それが正しい道だと信じてる」

「だいたい私はヒーローって柄じゃないし、
性格は欠点だらけだし、
真実を言うと———私はアイアンマンだ」

生き方を変えることは簡単ではない。
価値観、習慣、人間関係や仕事を変えて新しい自分を築き、追ってくる過去と戦わなくてはいけない。

過去は常に、このまま自然に辿るであろう不変の未来に進ませようとしてくる。
道を変えること、特にヒーローの道は、危険ともお近づきになる。
それでもヒーローという生き方を選ぶ勇者は、その心だけで既に高潔なのかもしれない。

1400万605分の1の勝機を悟った時も、トニーはアイアンマンを名乗り、ヒーローの心を証明した。
彼の父は「大義のために個人の幸せを犠牲にする必要はない」と言ったが、父に似たのかもしれない。
ハワード「娘はいい。私に似ない」

ホームカミングのトニー「私に似ようとするな」

「この国のために尽くしてくれてありがとう」

エンドロール後、MARVELロゴとともに、アイアンマンMARK1をつくる音が響く。
インセンが自分を危険に晒してもトニーを庇い、またトニーもインセンを庇ったその夜、トニーはあの音を響かせながらスーツを仕上げていった。
MARVELは、トニーのように過ちを犯した過去があろうとも、ヒーローになれることを示してきた。

アベンジャーズ4部作は終わった。
主だったヒーローたちは引退したが、間もなく現実に戻る私の心に、始まりの音が響く。
誰しもがヒーローという生き方を始められるのだ、と。
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