りっく

殺されたミンジュのりっくのレビュー・感想・評価

殺されたミンジュ(2014年製作の映画)
4.2
復讐の物語になると赦しや忍耐という言葉で丸く収めがちだけど、その安易な決着は思考を停止し、目の前の事象から目を逸らしているだけではないか。

だが一方で、それに激怒すると疲弊していく。じゃあこの世をどう生きればいいのか。そんなキムギドクの魂の叫びが聞こえる傑作。

本作はキムギドク特異のワンシチュエーションものだが、今回はそこに凝縮されたものの密度、そしてそれを抉り出す角度の鋭さが凄まじい。

被害者と加害者の境界を曖昧にしていく展開も見事だが、互いの組織というミニマムな体制の類似性から社会のシステムの問題を炙り出す強度が凄い。

もちろん残虐な拷問や暴力描写は相変わらずであるが、その痛みは表面的なものであって、それぞれの立場でギリギリ息づく人間たちを手際よく描写しながら、彼らの心の痛みのほうを見るものの胸に押し付ける。痛みを感じようとしない我々に牙をむく。

その一方で極限状態に置かれた際の人間の情けなさや可笑しさなど、ユーモラスな部分もきちんと入っているところがまた末恐ろしい。
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