NaoKomai

スポットライト 世紀のスクープのNaoKomaiのレビュー・感想・評価

3.0
地方紙勤務のたった5人の記者が、世界を震撼させる大スクープをものにするという映画です。5人は独自の秘密調査に基づく特集記事を掲載する「スポットライト」というコーナーを担当する記者で、彼らがこの映画で追うのは、カトリック教会の神父が教区の子どもたちに対して、長年にわたって性的虐待を行っていたというネタ。2002年の1月に記事が掲載され、ローマ・カトリック教会を揺るがす大スキャンダルへと発展しました。後にローマ法王が被害者たちに直接謝罪しに渡米するという事態になったほど。

ジャーナリズムの意義、新聞記者としての矜恃、聖職者のあるべき姿など、この映画で描かれるテーマはどれも「正義」という言葉に収れんされていきます。満塁ホームラン級のスクープは、清廉でなくてはならない教会の悪を暴き、世に正義を問い質す内容です。ボストン・グローブの記者たちにとっては、非常に大きなカタルシスだったことでしょう。

2002年当時だったら。

だけど今、時代は流れて、インターネットの時代なわけですよ。

足をつかいコネを駆使した手間のかかる取材を行って、ライバル紙に出し抜かれないように情報漏洩に気をつけて、記事がもっとも効果的に世間に伝わるように掲載日を選んで……といったような、「レガシーメディア」のお仕事を、この2016年に映画館で見る意義って何なのでしょう?

これは「ブリッジ・オブ・スパイ」を見たときに抱いた感想と似ています。確かにいい話です。それは認めます。しかし、今頃こんな話を見せられてもねえ……。

こんな、老人にしかアピールしないような映画作りはもうおしまいにして、もっと前のめりに行きましょうよ。若い世代に「スゲエ!」と思わせるような映画を作りましょうよ。

個人的には、「新聞社に新しくやってきたユダヤ人の社長が、町で悪事を繰り返すカトリック教会の連中を懲らしめる話」と解釈しました。そんな主題だから、映画化が実現したんじゃないでしょうか。

いずれにせよ、オスカー作品賞は出来すぎです。2年連続でイニャリトゥ(今年は「レヴェナント」、昨年は「バードマン」)に作品賞を渡すのははばかられたという分析で正解だと思います。
NaoKomai

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