NaoKomai

スティーブ・ジョブズのNaoKomaiのレビュー・感想・評価

スティーブ・ジョブズ(2015年製作の映画)
3.5
映画としての完成度は文句ありません。ジョブズのアップルでの30年以上におよぶ日々の中から、たった3日間だけを切り取って、「人間としてのジョブズ」にフォーカスしたアイディアも凄い。脚本家のアーロン・ソーキンの大胆で繊細な仕事が冴える、そんな映画です。

しかし、そこで描かれる物語は、観客(あるいはアップル信者)の見たい物語ではありません。観客が見たいのは、ジョブズのサクセスストーリーなんですよ。壇上からドヤ顔で「革命的な新製品」を発表するジョブズと、スタンディングオベーションでそれを讃える満員の聴衆が見たいんです。

だから、少なくともエンターテインメントとしては、この映画は失敗です。結果的に、ビジネスとしても失敗してしまった。

まあしかし、原作となるジョブズの評伝には、あんまりそういうカタルシスに満ちた描写はないんだよね。だから、この映画は最初から信者の見たい映画にはなる可能性は低かったということ。むしろ、アーロン・ソーキンの仕事をほめるべきでしょうね。この思い切りのいい構成に、よくぞまとめたもんだと。
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