NaoKomai

ルームのNaoKomaiのレビュー・感想・評価

ルーム(2015年製作の映画)
4.0
冒頭から、重苦しい室内劇で、救いのない場面が延々続きます。監禁された母子が、天窓一つしかない薄暗い部屋で健気に暮らしています。やがて、母は7年もの間監禁されており、息子のジャックはもうすぐ5歳の誕生日を迎えるということが分かります。そうです、ジャックは「ルーム」で生まれ、外の世界をまったく知らないで育ってきたのです。

そこが分かってから俄然、この重苦しい映画を見るのが楽しくなりました。レニー・アブラムソン監督の言葉を引用しましょう。「5歳という設定なら通常の場合、子役は単に本来の自分でいることを望まれる。しかし、ジャック役には演技ができる子役が必要だった」

そうなんです。この映画の何が凄いって、子役が凄いんです。まさに天才子役。

監禁生活は、映画の序盤であっけなく終了するのですが、そこからがこの映画の真のスタートです。母は7年ぶりのシャバ、ジャックは生まれて初めて「ルーム」の外のリアル世界と向き合います。初めて自動車に乗り、初めて病院に行き、母以外の人が作った食事を初めて食べる……。5歳児のリアクション、どんなだろう? 相当に難しい役柄ですよね。だけど、見事に演技してるんだよね。

実際には、子どもが世界に順応するよりも、母親(誘拐された当時は17歳)が順応する方が、大人な分だけいろいろ辛いことが多いという実情が描かれます。母親役を演じたブリー・ラーソンはオスカー主演女優賞最有力です。

だけど、そんな辛い役柄にはなかなか感情移入もできないので、脇で超絶名演技を見せる天才子役を楽しむというのが、この映画ではオススメです。
NaoKomai

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