スズタカ

スポットライト 世紀のスクープのスズタカのレビュー・感想・評価

3.8
感想を書きあぐねておりました…。というのも、これ難しくないですか?

いや、内容自体は、いたってシンプルなんです。キリスト教の最大教派であるカトリック教が、神父達による児童への性的虐待を教会組織ぐるみで隠蔽していたことを、地方新聞の1コーナーの記者達が明るみにした。その、タブーに触れた世界的なスキャンダルの取材過程は?という内容。

確かに、神父が犯した罪の大きさ、教会の取った対応のひどさ、アメリカでの宗教の在り方や立ち位置など、言葉面では解るし、とんでもないことだな!とは思うのですが、観ていながら、アメリカやその他の国々の人達の様には、自分は実感できていないだろうなぁと思ってしまったんです…。

その国や地域における、宗教の環境というか、密着性や親和性の度合いによって、かなり実感度や評価自体も変わってしまうんじゃないかな?それが、難しいと書いた理由です。

そんなこんなで、自分の様な環境や立場の者が、感想を書いて良いものか悩んだ次第です。

ただ、はっきり分かったこともありますよ。この映画、脚本と見せ方の演出がめちゃくちゃ上手い!

だってね、観賞済みの方に思い出して欲しいのですが、観ている最中、記者達が教会の圧力とか、色んな困難や妨害に立ち向かいながら、この事件を記事にした様に見えましたよね??

だけど、よーく思い出してみてください。普通に取材をしていただけです!教会による圧力や妨害なんて全く無いんですよ。

仲間内から、手を引いた方が良いとアドバイスされたとか、弁護士が依頼主の名前を教えてくれないとか、パーティの名簿に自分の名前が無いとか、近所に過去に事件を起こした神父が住んでいて心配だとか、果てはコピー室が営業時間が過ぎて使えないとか…。ナンダコレ笑

これらは、映画を観ている最中は、まるで教会側が行なった圧力による妨害や脅威の様に演出されていますが…全部普通の事じゃないですか?教会は、何もしていないです。

パーティの名簿に名前が無いとか、コピー室の営業時間が過ぎてコピー取れないとか、教会には何の関係もなくて、今思い出すとホント笑っちゃうレベルだし、本来なら本作に入れるべき内容ではないはずなのに、観ている最中は、まるでそれらが教会側の圧力や妨害に思える。

記者達が勇敢に使命を持って、巨大な権力に立ち向かっているように見えるんですよね〜。そこが凄いわ!!

ただ、それら映画としてのエンタメ性を優先し過ぎて、本来この映画で描くべきである、"カトリック教会の犯罪を記事にすることにした"こと自体が、どれだけ凄いことかについて、描いてはいたけど少しボヤけてしまった様に感じました。

そこは、勿体なかったかな。
スズタカ

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