サンヨンイチ

スポットライト 世紀のスクープのサンヨンイチのレビュー・感想・評価

3.6
カトリック教の神父が子ども達に
性的虐待を働いている。

偶然起きた不運な事故、と
大衆が気に留めなかった残虐な事件は
大きなスキャンダルへと発展していく。
隠蔽されてきた類似の愚行。
黙認される加害者と
黙殺される被害者。
加害者は認められ、被害者は殺される。

氷山の一角から露になる闇は
どれだけ掘り下げようとも底知らず。
取材を進めていくにつれ、
「教会」という街の権力に
誰もが知らず知らずのうちに平伏していた事実に愕然とする。
明らかになったのは事件の数々だけではない。
権力にへつらい、
正義と悪の判断を誤魔化してきた、
禁忌の歴史という地層が明らかになったのである。

とどまることを知らない悪を掘り下げていく記者たち、
「スポットライト」の面々の表情は
ストーリー内で晴れることはついになく、
勧善懲悪の達成感やカタルシスを得ることはできません。
それでも、弱者へ寄り添い
公正を求め、事実を開示するために奮闘する彼らは
ジャーナリズムの在るべき姿を体現します。

会社でのプロフェッショナルな姿とは対称に、
家には何も知らずに過ごしている家族がいて、家族も襲われるかもしれない。
何不自由なく平和に過ごす家族の日常の
すぐそこに、おぞましい事件が隠蔽されていたという、えもいわれぬ恐怖が中盤に襲ってきます。


「映画」というエンタメで
こうした事実に基づく物語を描くことがすごく重要だと常々感じています。
映画を通すことにより、

事実や当時の心情を
映像によって可視化し、

大衆にとって理解しやすいように
セリフや表情に意図を込めたり、

より心に深く刻むために
カット割りや音楽で、事実を編集することができます。

山場の多い、のめり込める映画では決してありませんが、
改悪改竄の昨今、見ておくべき作品だと思います。