都部

ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密の都部のレビュー・感想・評価

3.4
鈍重で陰惨とした雰囲気のみが蔓延していたことでエンターテインメント性を削いでいた前作と比較すると、構築された世界観に対する諧謔味と直面する問題の由々しさの塩梅が程よい本作。

たしかに場面場面を取り上げていけば面白い作品ではあるが、前作前々作で提示した問題の処理の仕方や登場人物達の感情推移や目的意識の変化という細部に目を向けると、本作の脚本には無視出来ない粗が多々あるのは紛れもない事実である。

本作序盤で『グリンデバルドの未来予知の対抗策として行き当たりばったり的な策』が語られるが、本作を通してそのアドリブが如何にして相手の裏を掻いたのかという理屈に位置する場面はさして描かれず、各登場人物の行動がドラマとして結実していない。

よってそれが脚本の不出来さに対する女々しい言い訳のように映るのは否めず、それを皮切りとして本編を振り返ると勢い任せの連続により本作が形成されているという事実に直面するのである。

その過程の中でニュート兄弟によるVSマンティコアのシークエンスを初めとする、既に完成された魔法族の世界観を活かした魅力的なシーンがあるだけに、それらがその場でしか機能しないシーンとして作品に位置付けられて留まっているのは素直に惜しく感じる。

そうした脚本上の杜撰さがどうしても見られる一方でダンブルドアとグリンデバルド/ジェイコブとクイニー、作品の端的な明暗を担当する二組のカップルの恋路が作品を強く牽引しており、この主軸は強固であるから最低限の体裁は保たれている印象。

特に前者のホモセクシュアルな関係性の機微は本作の見所の一つとなっており、終盤の互いの感情の爆発とも言うべき戦闘シーンは画としてしっかりと見応えがある。作品において印象的なシーンの殆どはこの四人が担っているが、前作は語り部以下の立ち位置だったニュートも物語にしっかり食い込むという意味ではまあマシな扱いである。

しかしこの思想と痴情の縺れによる魔法界を巻き込む騒動が進展するに連れて、本シリーズの顔役だった『魔法生物』と前作を通して重要な役柄に仕立てたはずの『クリーデンス』の役割は脇へ脇へと追いやられており、特に後者の扱いは前作丸ごと投じて過程を描いたのにも関わらず、彼が迎える尻窄んだ結末には不満を零さずにはいられない。

諸々のキャスティングから制作事情の難航も垣間見えるが、四年振りの続編と考えるとこの一定評価は得られるであろう平々凡々とした収まりは端的に『物足りない』の一言で、打ち切りの噂もされる本シリーズの今後に明るい展望を見出すのは難しいと言える。
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