鰤鰭

ピエロがお前を嘲笑うの鰤鰭のネタバレレビュー・内容・結末

ピエロがお前を嘲笑う(2014年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

全体的に面白そう・凄そうな雰囲気を作り出すことには成功してて、「僕、フィンチャーのフォロワーです!」と言わんばかりのトーンと演出で、クライムサスペンスとしての興味は持続するものの、観終わった後に面白かったか?と聞かれると、細部の脆さと肝心のどんでん返しがあまり上手く作用していないことから、面白くはなかったかなという感触。

ダークネットのビジュアル的な表現は面白い。「Welcome to the Underground」とか言っちゃうあたり厨二に振り切った2chのコピペかよって感じでダサいんだけども。

「どんでん返し」というものが効果的かどうかは、分かりやすく言うと、2回目の鑑賞が別視点でもっと面白いものになるかどうか。物語の中にフリ・伏線を仕込み、どんでん返しによって積み上げた仕掛けが作用した時に、視点が180°変わって「なるほど!」「確かに!」という膝を打つような納得感がある場合に「俺は騙されていた!」となる訳で。
この映画にはフリが無いから、どんでん返されたところで「ふーん、そうなんだ」だし、見返しても視点が変わらないから、2回目を観たくならないという問題がある。
この辺はファイトクラブやシックスセンスには届かないところ。
(そういう意味で本作は『ユージュアルサスペクツ』を思い出す。上記の理由から、あれはどんでん返しが効果的ではない映画だと個人的に思ってる。)

加えて、脚本もやや甘い。どんでん返しがしたいからなんとか脚本にしたって感じで、その違和感が拭えず、物語に上手く落とせていないと感じた。具体的に気になったポイント↓

・ベンヤミンの語りを映像として観ているのは鑑賞者だけであって、ハンネにとっては口頭説明でしかない。その前提で、マリの話とか「マックスがね、ほら、右手のここに釘が刺さって〜」とかディテールまでどう説明するのかね?やはりベンヤミンの供述は、映画を見てる我々が後でどんでん返されるための語りであって、劇中の状況的には不自然だしあれが決め手にはならないのでは?ハンネが勘違いを起こすとして、それはベンヤミンの供述だと厳しくて、普通に医者に聞いて「もしや?」くらいなんじゃない?

・普通に証人保護の結論出す前に裏付けとして精神鑑定するよね?

・仲間全員で透明になるために証人保護プログラムをハッキングするのが最終目的だと思うけど、いろいろと調べて計画はしてるものの、やはりハンネの最後の行動に全振り一点突破なのはリスキー過ぎる。狙い通りハンネを騙せたとして、ベンヤミン自らにハッキングさせるとは限らないし、普通ならさせないだろ。させるとしても意図しないことはさせないように横で監視はするでしょ。

・MRXが普通に捕まり過ぎ。ユーロポールの設備を利用したからこそ捕まえられた、みたいな、自首してユーロポールの懐に飛び込んだ理由の1つとしても機能するような設定にした方が上手かった。これだと捕まえること自体はいつでも容易=MRXよりクレイの方がよっぽどヤバいじゃん、ってことになっちゃう。

・ハッカーが凄いんじゃなくて、どの組織もセキュリティがザルすぎるように見えてしまう。これも見やすくするためにハッキングのディテールを省いて地下鉄に置き換えちゃったため。

最後の「タネを知ったらがっかりする」というセリフはこの映画への皮肉にもなってしまってるんじゃないか?と思ったり。

【鑑賞回数】1
【鑑賞履歴】
・2021/11/23
鰤鰭

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