垂直落下式サミング

ピエロがお前を嘲笑うの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

ピエロがお前を嘲笑う(2014年製作の映画)
1.2
どなたが考えた言葉なのか知らないが「どんでん返し映画」のことを「マインドファック・ムービー」なんて呼ぶらしい。欠片もセンスを感じない造語だな。ダサい。お役所仕事の「母さん助けて詐欺」の方が格好つけてないぶんマシに思える。
ネタバレ禁止映画の新たな傑作との触れ込みだったが何のことはない期待値を数段下回る内容の作品だった。細かく刻んだカット割りに時系列操作、そんでもって必然性なく挿入されるザッピングがうっぜえ。この編集がとにかく肌に合わない。ガイリッチー、タランティーノ、フィンチャーの悪いところばっかり真似して、本筋の話は『ユージュアルサスペクツ』風味に仕上げたらこんな映画になりましたと。気取った演出でだらだら進む回想シーンやネット描写にうんざり。別にMTV的な作風を否定する気はないが、彼等の真似をする作家の映画って格好ばっかりで観れたもんじゃないのが多くて、まさにこれもそんな有象無象のひとつだった。
ハッカーが何でも出来すぎなのもどうかと思う。コンピュータやインターネットの普及以前の映画だったらわかるけど、こんな大胆不敵なハッキング行為を野放しにする警察は何やってんでしょうね。あえてコイツらを泳がせるメリットとは?この時点で真面目にみる気なくなるし、サスペンスとして上手かないし、『ファイトクラブ』のポスターを撮してオマージュとかいう鬼ダサも必要ない。
宣伝文句は「100%見破れない」でしたか。そのキャッチコピーがなきゃこんなかったるいもん最後まで観ていられない。この作品の結末が読めないってのは単にどんでん返しの回数の問題だ。これが気が利いてるってどうなのよ?と思っちゃうんですよね。落語だってシャマランだって、オチで明示される事件の真相そのものの奇抜さは然程重要でなくて、上手くサゲるために必然性のある演出を用いて物語を構成し、観客を映画世界に引き込むのが作家や演者の手腕として問われるところじゃないですか。
どうせひっくり返すとわかってる大仕掛けのために用意された前フリをダラッダラダラダラ変な演出でみせられるのは苦行だ。そのうちオチなんかどうでもよくなってくる。
僕たちはサスペンス映画を評すときに「もうひとひねり欲しかった」なんてことを言ったりするけど、それを大真面目にやられると後だしジャンケンにみえる良い例。