藤田武彦

日本のいちばん長い日の藤田武彦のレビュー・感想・評価

日本のいちばん長い日(2015年製作の映画)
2.9
映像はうつくしい。
厳選された美術に、明暗のコントラストがきいた、"300調"の画面。

映画「300」。
300人の兵で、10万の軍勢に立ち向かった人たち。そこから国民全体の戦いがはじまる。
大勢やヒエラルキーに立ち向かうという意味で、本作の人物たちと共通する。

軍部からの突き上げを腹におさめ、乗っかるフリをして守った役所。
軍部のおどしに対し、現場でエネルギーを止め、ボイコットした戸田。
黒子の侍従長たちがのさばる上層部に対し、実力行使で迫った松坂。

その精神には通じるものがあります。
「300」、ぜひおすすめです。


本作品、戦争映画にありがちな、軍人たちの怒鳴り合いが続く。
一見すると、重要なことが話されているかのように見えるが、実は大したことは起きていない。
観客のエネルギーをムダに消耗し、また他の重要なシーンを埋もれさせてしまう。

全体主義に対抗することを描くなら、全体主義の方法論と、それに対する対処方法に注力した方がよいだろう。

また、役所、松坂、戸田と役割が分散しており、一貫した共感を得にくい。
役所広司をうつくしい画面で観たい人には、おすすめできるかもしれない。
藤田武彦

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