eiganoTOKO

日本のいちばん長い日のeiganoTOKOのネタバレレビュー・内容・結末

日本のいちばん長い日(2015年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

監督が戦後70年の年に封切りをした理由を「軍をなくすことでしか、日本を継続できなかった。そこが一番重要。それを思いだしてほしい」と言っている。
岡本喜八版も公開当時から戦犯を英雄に描きすぎている、という批判があったが、喜八版は草民の死体写真や動画をはさみ、こだわりだった死亡者数をナレーションでいれるなどの工夫もあった。
原田眞人監督は市民の死が全くない。東京大空襲の3月から、終戦の8月15日まで、ぐだぐだわちゃわちゃしてた無能おじさんたちを描くのはいいけど、軍人の家族サービス、人間らしさほっこりエピソードも加えてて、オーマイガ。
阿南惟幾の奥さんが、息子の死について戦火をくぐり抜け、阿南切腹後の死体に話しかけるシーンなんて原作にはないし、帝国主義における「良き妻」を強調する意味なに?
軍人が政府に関わるべきではないなどの発言で、わりとまともそうな阿南も、「イケイケドンドン」で末端の兵士を開戦直後に玉砕戦で死亡させて失敗したこともあるわけよ。戦犯の責任を安っぽいヒューマンドラマにすんなや。
ビルマで食べ物がなくて、もうここで死ぬんだな、と覚悟を決めた私のじいちゃんはイギリス軍の捕虜になって命が救われたと感謝してたけど、同じ境遇にあった下っ端兵士たちが終戦後もバタバタと死んだわけでしょ。連合軍に感謝しようものなら、日本人同士で殺すわけでしょ。はっきり言って、共喰い。
天皇と、軍人による一億総玉砕という洗脳によって、頭がおかしくなってしまった陸軍を、狂気と同情をもって描けたらまだマシだったけど、松山ケンイチとか、堤真一がギャグにしか見えない。緊迫感がない。

唯一、松坂桃李の青臭く、純朴なだけに真っ白なキャンバスをプロパガンダに洗脳され、暴走軍人となる狂気が素晴らしい演技。血管が浮いて悔しがる頭部は一見の価値あり。
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