デニロ

合衆国最後の日のデニロのネタバレレビュー・内容・結末

合衆国最後の日(1977年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

1977年製作。原作ウォルター・ウェイジャー。脚色ロナルド・M・コーエン、エドワード・ヒューブッシュ。監督ロバート・アルドリッチ。、

高校の授業で、世界で一番大変なのはアメリカの大統領だ。あんなものになりたいと思う人間の神経が分からない、と言っていた教員がいた。日本の首相なんて比じゃない。その大統領の話。

ホワイトハウス。いつものように朝がやってきて、大統領は剃刀で顔を整える。執事が、お客様ですと声をかけ、待たせちゃ悪いからお通ししろ、と大統領が答える。そんな時、顔に当てていた剃刀が少し引っかかる。ちっ、と滲んだ血にげんなりする大統領。

ベトナム戦争当時の国家機密文書の公表しろと、元空軍幹部バート・ランカスターが、刑務所を脱獄しモンタナ州にあるミサイル基地の一つのミサイルサイロを占拠する。占拠シーンにはかなりの時間を割いているんですが、アメリカの軍事基地ってあんなに簡単に占拠できるんだろうか、というくらいセキュリティが甘い。バート・ランカスターがその基地の設立に関わったといえども、そうたやすく入れるものでもないだろうと思う。監視カメラの稼働範囲でしか映らないので基地全体の大きさが分かるわけでもないけれど、守衛の兵隊の員数がしょぼすぎる。まあ、そんなところを見せてサスペンスを盛り上げようとしているわけでもないようで。

面目丸つぶれの基地の責任者リチャード・ウィドマークが立てた作戦は占拠されたサイロに小型核爆弾を仕掛けて殲滅させるというものですが、ホワイトハウスは、小型核爆弾て死の灰はどこまで飛ぶの、とかごじゃごじゃ言って、なかなか決められない。ようやく決まって潜入するのだが、核爆弾設置の最終段階で工作員が足を滑らせて警報機を鳴らしてしまう。わたしも何事が起ったのだろうと目の中の残像を確認する。しょぼい、しょぼすぎる。サスペンス映画を撮るつもりは端からないということはこの後に分かります。

公表を要求された文書というのは、ベトナム介入は何の成果も産まない、兵士は無駄に死んでいき、決して勝利することはない、ソ連との代理戦争でお互いにガス抜きをして、全面戦争を避ける手段でしかない、と言った風な官僚のブリーフィングを当時の大統領が確認しているもの。大統領を始め召集された主要閣僚は、こんな文書を国民に公表なんかできるわけないじゃないか。さて、どうする、というのが本題。

バート・ランカスターは、文書公表に加え、国外逃亡資金1千万ドル、逃亡地点までの大統領の身柄、逃亡手段はエアフォースワン。核ミサイルを奪われてしまっている以上、選択肢はないと誰もが分かっている。大統領の責務とは。でも、大統領はこんな理不尽なことで自分の命を捧げることなんてできない、と憤然として席を立つ。

方や、バート・ランカスターは回答を待つのだが、傍にいる仲間はせせら笑う。奴らは大統領の命なんかなんとも思っちゃない、まとめて始末されるよ。

大統領はその責務を思い返す。
Oh, say can you see,
by the dawn's early light
What so proudly we hailed
at the twilight's last gleaming? /アメリカ合衆国国歌

事が済んだら、文書を公開することを政敵の国防長官に約束させて死地に赴く大統領チャールズ・ダーニングの表情の演技が素晴らしい。

この作品も、崇高な死に臨む理想の大統領を描いて、国民の政治に対する不満のガス抜きになっているのかもしれない、わけないか。

アメリカ大統領。わたしには無理。

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