徳江の言葉は本当に切なかった。楽しかった、店長さん･･･と。
いい映画だった。樹木希林さんのユーモア、軽さ、リアリティ。
永瀬正敏さんの「普通の男」の役は魅力的だ。過度な緊張感がない。
河瀨監督の映画は、風、緑がそよぐカットが美しい。
「今日はもうこのへんで」と店長が言い、帰り支度をする徳江には涙が出た。彼女が一番敏感に気づいているのだ。
ストーリーに予定調和の部分があったかもしれない。見ていればわかるのに、いわずもがなの余計なセリフもあったと思う。けれど樹木希林さんという稀有な俳優がどもったり、明瞭に言わないことでこの映画を救ってくれたように感じた。
「モーターサイクル・ダイアリーズ」でもチェが療養所を訪ねていたのだが、全くスルーしていた。本作のように正面から取り上げる作品は、映画から栄養を吸収して生息している私には貴重な一本になった。
