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バケモノの子のSIのレビュー・感想・評価

バケモノの子(2015年製作の映画)
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2018.12.13
自宅TVにて鑑賞

両親を失い愛情を注がれず育った少年がバケモノの世界に迷い込み、同じく孤独に生きてきた剣士と互いに高め合い癒し合う物語である。

やはり全てのレベルが高い。
ファーストカットのCGから気合が入っていて凄い。ばちばちにセルシェーディングを使っているが丁寧に作業していて違和感が全くない。本当にすごいレベルまできていると思う。
CGに拘り過ぎたのかラストまで鯨を引っ張っていたのは我欲が出たか。普通に蓮の殺陣を見たかったような。

全ての人間は闇を抱えていて、バケモノには闇がなく、人間がバケモノの世界に入ると抱える闇が増幅するという設定は個人的に面白かった。ただ主人公、蓮の心に熊鉄が入り込んで蓮の闇が埋められた、というオチはどうなんだろうか。闇は無い方が素晴らしいんだという暗黙の了解は、正直監督や脚本の思想の浅さを感じてしまう。

結局細田守さんは「家族」というコンセプトを前面に押し出し過ぎていて─勿論精神分析的にも幼少期の経験や環境がドラマを作りだすと言う事は重々分かっているつもりだが─それが一部の人に敬遠される理由だろう。技術力や作品の作り込み方を考えるともっと多くの人に見てもらってもおかしくないのだから。
人々が全ての縁や縛りから浮遊している時代。彼が訴えるメッセージというものは皆が素直に受け入れられる物ではない。彼が伝えたいものと観客が飛びつくものは必ずしも一致しないのだという事を宣伝は理解しているか。タイトル、ポスター、キャッチコピー。全てが伝えたい事を押し出し過ぎている。説教臭い。爽快感がない。入り口が出口と同じ場所にある。そこに問題がある。

『未来のミライ』が更に我欲を押し出して微妙過ぎて、次回作どうなるかわからないが、また大衆に向けて作品をつくってくれることを祈る。
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