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グローリー/明日への行進のFlunkoutのレビュー・感想・評価

グローリー/明日への行進(2014年製作の映画)
4.0
日本人でも多くの人が知っているキング牧師ことマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの伝記映画。(意外にも今作が初の映画化)

今作はキング牧師の幼少期から暗殺まで全てを描いたわけでは無く、公民権運動の中でも取り分け「投票権」を認めてもらうまでの闘争を描いたもの。

劇中ではアメリカの南部における人種差別の根深さ、恐ろしさが克明に映し出されている。

『風と共に去りぬ』も南部を描いた名作だが、やはりこういう作品を見ると黒人団体が同作の「黒人と白人が仲良く暮らしていた南部」という描写を問題視するのも合点がいくというものだ。

なんせ黒人だけでなく、公民権運動に賛同した白人まで「白いニガー」と罵られリンチによって殺される。

投票権をよこせという当たり前の主張が文字通り命懸けだった事がわかるだろう。

近年のトランプ政権下で表面化した人種問題や遠回しに投票をしづらくする行為など、この映画が作られた背景には多いに心当たりがある。

「自分は貧しい白人だが、それは黒人であることよりも幸福だ」とは劇中の言葉だが、近年この国でも特定の国や特定の民族を蔑んで自分を肯定する、さもしい主張をする人が増えているように感じるからだ。

人は個人単位だと善良で賢いが、集団になると臆病で愚かになるということだろう。

唯一の希望は、人は臆病で愚かな判断をすることもあるが、犠牲を伴ってでも最終的には正しい選択ができるということをキング牧師が実証してくれたことである。
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