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恋人たちのkurageのネタバレレビュー・内容・結末

恋人たち(2015年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

都会に生きる人たちの孤独と絶望。運河から見上げた、渇いた冬の空にある光と希望。2015年の公開当初に映画館で観たときの衝撃は忘れない。

物語がいいとか表現がいいとか文脈だとかこの映画に関しては何も語ることが出てこないけれど、泥水の中に一旦放りだされながらも心身が浄化されていくような感覚を覚えたのはこの映画が初めての体験だった。
きっと東京という舞台が自分にとってリアルだったからなのかもしれない。
ちょっとだけ盗み見していたような東京のリアルをこの映画によって突きつけられ、長く東京に住みながら自分はそのことに馴れて何も感じていなかったということに気づき、愕然としたのだ。

あれから5年。5年は意識的に人が変わるのに十分な時間である。この頃、自分の中に撒いた種が少しだけ育っているのを感じるが、その種はこの映画のラストシーンにばらまかれたと思っている。DVDを久しぶりに見返したら、映画の内容は何も古ぼけていなくて、なんとなく歩んでいるところは大丈夫だとほっと安心するところがあった。

この感覚は自分だけのもので周囲に共有はできないものだと思うので、他人にこのレビューを理解してほしいとは思わないが、久しぶりに観た記録としてここに当時の記憶を残しておきたかったのでお許しを。

めちゃくちゃ暗い映画なのに、作り手の誠実さによってじわじわとあたたかく伝わってくる。橋口監督の次回作はいつになるんだろうか。ワークショップに参加してみたい。
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