ちろる

恋人たちのちろるのレビュー・感想・評価

恋人たち(2015年製作の映画)
3.7
橋口監督は性的マイノリティでありながらもそこにスポットを当てすぎることもせず淡々と受け入れる独特な視点が印象的な作品。
ごく普通のなんなら不器用で無口でおとなしい男がせっかく掴んだ幸せを通り魔に奪われた。
「お前ら全員同じ目に遭ってからモノ言えや!」
と叫ぶ。

この物語の主人公たちは皆何かと満たされず、半ば諦めているようなそんな人たちばかりだ。
みんなほんとはどこにでもいるような普通の人間で、ただ歯車がとあるきっかけで崩れてしまっただけだからこれは特殊な人たちの特殊な話なんかじゃないのだろう。

アツシに対する世間の冷たさに苛立ってしまいそうになるけど上司役の黒田大輔のさりげない温かさがこの作品の唯一の救いだった。
アツシも主婦の瞳子も、ゲイの弁護士の四ノ宮もかすかな希望を見つけたけど、やはりまたいつか同じような孤独とぶつかり立ち止まってしまうこともあるのだろう。

日常における何気ない言動の1つ1つが他人の人生を変えていってしまうこともあるのだという事をふと思い、他人を傷つける事もなく、自分の人生を踏み外さずに進むこがどれだけ難しいのかを思い知らされる作品でもありました。
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