クチニフルトリ

特捜部Q 檻の中の女のクチニフルトリのレビュー・感想・評価

特捜部Q 檻の中の女(2013年製作の映画)
3.7
ミステリーを装うメロドラマ。彩度の低い画面の中、唯一鮮やかなシーンがある。復讐の起点が初恋の記憶として撮られている。
5年前の帰り道、ミレーデは対向車のライトに目が眩む。この過剰な光のシーンが、加圧室のライトによって呼び覚まされる。二つの光源がまるで対向車のライトのように彼女を刺す。のちにわかることだが光は自動車事故のイメージだ。ただし対向車と加圧室の強烈な光とは違い、目映いと言った方が近い。雪の白とワンピースの赤を纏う少女が少年の瞳を捉えて離さないのはそんな光の下である。
この映画は加圧室の光を閉じる選択をしない。ミレーデを刺した光がカールと彼女の光の記憶によって変化し波及する。カール、祈るアサドに注ぐ。
タイトルの“檻”も同様に変化する。自動車、加圧室から透明のシェルターへ。男女を分つガラス越しの切り返しはミレーデ、カールとアサドによって繋ぎ合わされる。特捜部Qの地下室はもう“檻”ではない。