Torichock

ビューティー・インサイドのTorichockのレビュー・感想・評価

ビューティー・インサイド(2015年製作の映画)
2.6
「The Beauty Inside/ビューティー・インサイド」

目が覚める度に顔が変わってしまう運命を抱えた人間(男か女か分からないから)の人生と、彼の恋を描いた作品。

やりたい事は「美女と野獣」
大切なのは見た目ではなく、中身というかその人自身であり、心だよというテーマ。
もちろん、僕もこの映画が伝えたいテーマは素晴らしいと思えるし、フラットにすごいイイ映画だと思う。
主演のハン・ヒョジュが、人と距離を取ってきた主人公が恋してしまうような、そんな魅力的な女の子だったし、可愛かった。
時々、笑えるシーンもたくさんあったし、秘密を打ち明けた友人は、本当にイイやつでグッときた。

だけど、やっぱりどうしても解せないところが多すぎた。

まずは映画の撮り方。
本っ当に正気か?と思うほど勿体付けてダラダラとしてる。沖田修一監督のそれと違って、その間延び感が良い時間を生んでるとは到底思えない。
シーンのつなぎ目にひたすら、"ポロンッ"みたいな劇伴が流れて、被写界深度が浅くて柔らかい光が差し込む作り。
さらにその勿体付けでイライラさせるのは、それまでの映像で視覚的に分かってるウジンやイスの心情を、ナレーションでそこにかぶせてくる。
親切設計にもほどがあるというか、もう分かっとるわ!とずっとイライラしてしまいました。

序盤に、毎日容姿が変わるという描写は何度も見させられてるのに、何度も何度も同じ動きの中で人が変わるというシーンが繰り返されてゲンナリした。


そして、なによりも美醜問題。

テーマ的には素晴らしいことだけど、だからこそ丁重に扱うべき問題だし、そのための"目が覚める度に顔が変わってしまう"という設定を設けているのに、この映画は、

大切なタイミングは必ず韓国人で、男で、イケメン(なんだよね、あれ?)なんです。



はぁぁぁあああ⁉︎?




僕、基本的にご都合主義は気にしない。
この日はこれを見る前に、「さらば、あぶない刑事」を観てたんですけど、テレビ映画の娯楽作品だから、全然オッケー。
だけど、こんな美醜という大切なテーマを掲げてるくせに、都合よいことをされるのだけは解せない。

(別にブスとかハゲとかそういう極端なことを言ってるんではない。そんなおためごかし映画が見たいなら、「ハンサム☆スーツ」でも見とけばいい。)

イス側も、ウジンがどんな容姿でも、ウジンをウジンとして受け止めるのに、毎回疲れるって描写もあるから、それはいいんだけど。
でも、この映画は容姿は関係ないっていう映画を目指してるのに、作り手のこの作品内でのご都合主義な考え方はすごいフェアでないと感じてしまった。

決定的な瞬間に国籍も性別が違くても、二人が変わらないというところが見たかった。
言葉も乗り越えて欲しかった。
それこそ、この僕の考えこそが容姿や国籍に捉われてるとも考えれなくもないけど、それならそれで、せめてこのフィクションの世界の中ではそんな奇跡が見たかった。
僕が「美女と野獣」のレビューの中で、"野獣のままで良かった"という声の多さに、

それはもう野獣という容姿が好きなってるからじゃねぇか!野獣だろうなんだろうと関係ない!って話だろ!根本の見方が間違ってるんだよ!

と、一人でプンプン怒って時の感覚が呼び戻されてしまった。


そういったご都合主義展開と、くどいくどい作りに

"そりゃないぜ..."

が続き、鑑賞後にはなんかグッタリしてしていました。

絶対にいい映画になり得たと思うし、これをいい映画ということも正しいと思うけど、僕にとってはつまらないというより、もったいない映画でした。
作り手のイイと思う話と、僕のイイと思う話が全然違っていたってことなのでしょう。


ちなみに、日本代表の上野樹里。
いい役を与えられていたけど、彼女だけは全くの別人に見えました。
これ、誰?ってなりそうでした。
つまり、ウジンの性格を体現出来ていたとは到底思えない、キャスティングか演技か演出ミスじゃ...
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