骨折り損

はじまりへの旅の骨折り損のレビュー・感想・評価

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
4.6
間違いを認められる人間は、悪い人じゃない。

お父さんは子どもたちのことを思って、学校に行かせず、自給自足の生活を続けてきた。彼らが文明と触れ合った時、もちろんその異常性に気付いてしまう。お父さんの事も嫌いになってしまう。

お父さんの考えは偏っているけど、悪もんじゃないんだ。子どもたちを愛しているから。その愛の出口がちょっと周りと折り合いがつかないだけ。

テレビゲームをしたい!学校に行きたい!と願う子どもたちを前に、お父さんが意地でもそれを認めなかったら、この映画の印象は全く違った。

彼が最後まで頑固でいられないところが、この素晴らしい映画の全てだった。彼も弱い、彼も不安だった。それを知った瞬間、突然自分が裸にされたような気がして、涙が頬を伝う。

正解を求めるだけのゲームだったら、人生はどれほど楽だろう。正解がないゲームはどこまでいっても僕らを不安にさせる。ただ一つ言えるのは、その不安は宝物だ。不安があるから、笑える日がある。

この映画のラストカットは一生、忘れないだろう。
骨折り損

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