何が起こるか分からないとはまさにこの映画のこと。
時に見やすく、時に冗長とも取れるシーンの積み重ねが唯一無二の不思議なリズムを作り出している。このリズムが「映画とはだいたいこんな感じだ」という観る者の型をぶっ壊してくれて気持ちがいい。
不思議なことがたまに起きる。
この「たまに」というのがこの映画の魅力で、やたらめったら幻覚のような映像が展開される訳ではない。ほとんどの時間は地に足のついた現実がはっきりと語られる。いや語られている風と言うべきか。そこに安心していると、突然のマジックに驚かされる。そのバランスが絶妙で、終始惹きつけられる。
昔からずっと思っていたが、実写映画という媒体の特性上、非現実的なことを映像の中で表現すると、ここは幻覚で、ここは現実で、と物語の中での整合性を求める人も一定数存在する。しかしこの作品は、映画がいかに主観的なメディアであるかという事実そのものを堂々と明示してくれた気がする。