ちろる

アリスのままでのちろるのレビュー・感想・評価

アリスのままで(2014年製作の映画)
3.9
頭脳明晰、とても優秀な言語学者であり、美しい完璧な妻のアリスに告げられた若年性アルツハイマーという残酷な宣告。

日々自分の病の進行を感じ、恐怖に怯え、
いっそガンの方が、良かったという台詞は、ガン患者当事者が聞いたら穏やかではないけれど、だからこそこれはこの病気の患者のリアルな言葉であり、そこが生々しく突き刺さりました。

プライドもある彼女が最後の自尊心を守るために、進行した自分にむけてビデオレターへつくるのは、正しい判断ではないけれど、誰もが理解ができる行為でもあり、自分が自分であり続ける為にこの方法しかないという、先の見えないトンネルに入る彼女の絶望感は計り知れないで胸が痛くなります。

映画で描かれるのはこの終わりの見えないトンネルの出発地点であり、比較的さわやかに終了しているが、これから20年、30年記憶を失い続け、アリスからアリスが消えていくに従い、今度はこの家族にとっての途方も無い戦いの始まりを意味していてそれを思うと、絶望的な思いにもさせられました。

遅かれ早かれ、誰にでも起こりうるこのあまりにむごい現実のストーリーに目を背けたくなるけれど、自分の親が、配偶者が、そして自分がそうならないとは限らないという現実を思い出させ、考えさせられる映画でした。

重くて辛いテーマですが、ジュリアンムーアの演技が本当に素晴らしい。
聡明そうな美しい顔から徐々に老人のように魂が抜けるように変化する過程が素晴らしい。
彼女の演技の凄みがこの映画を(良い意味で)より恐ろしくしているのだと思いました。
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