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アリスのままでのmitoのネタバレレビュー・内容・結末

アリスのままで(2014年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ジュリアン・ムーアがアカデミー主演女優賞を獲得した、若年性アルツハイマーになってしまった女性の話。

自分が自分でなくなってしまう恐怖、出来た筈の事が出来なくなってしまう苦しみ、羞恥。アルツハイマーを患った本人の苦痛が映画が進むにつれて、どんどん色味が増して行く。
しかも、彼女のアルツハイマーは遺伝性なのだから更に辛い。自分だけならばまだしも子供達、孫にまで影響を及ぼしかねないという状況は母親としてはさぞかし辛いだろう。
個人的に印象的な場面は、終盤のまだ記憶がある時の彼女が今の自分の残したメッセージから起こる、窮地。この窮地を脱した理由が、過去の彼女が思ってた以上に、アルツハイマーの進行が早かったという何とも皮肉な展開。

ただ、家族との交流の場面はあくまで映画的というか、非常に幸福な視点が多い。
次女の日記を盗み見たのがばれて(ばれたのも痴呆がきっかけ)、次の日、内容を忘れたと自虐的な発言をし和解したり。
まあ、実際に忘れている訳だが。
旦那さんとの思い出語り。
長女の名前は忘れても、赤子を抱く事は忘れておらず、孫を自分の手で上手く抱いたり。

でもそんな彼女も最後は無の境地に到達してしまい、虚空を見つめるような彼女の表情のアップで映画は終わる。

この本人の葛藤のネガティブな描写と家族との絆のポジティブな描写の塩梅が非常に自分好み。
変に感動路線に持っていかず、彼女は不幸なのか、幸福なのか、思考する事を求めている感が大好きだ。
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