アキラナウェイ

最高の花婿/ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

3.5
フランス産コメディは良作多し。

4人の娘が続々と異国の婿達に嫁いでいく悲壮感を面白おかしく演じる父親役クリスチャン・クラヴィエや末娘役エロディー・フォンタンも、「世界の果てまでヒャッハー!」でお馴染み。

ヴェルヌイユ家の4人娘の内、3人の姉達はそれぞれアラブ系、ユダヤ系、中国系の男性達と結婚。カトリック教徒でドゴール主義の父クロードは、結婚式の度に苦虫を噛み潰したような顔で参列する始末。末娘ロールこそ、フランス人と結婚する筈と期待していたが、彼女が連れて来た婚約者はアフリカ系男性。そりの合わない両家の父。果たしてロールは円満な結婚式を迎える事が出来るのか…。

食事の席でひとたび宗教の話や人種の話が飛び出すと、一気に喧騒の渦に巻き込まれてしまうヴェルヌイユ家。

さすが移民の国フランス。
差別発言がポンポン飛び出しても、それが笑いへと昇華して国民的大ヒットを記録したとか。

コメディとして面白いけど、本当の意味で日本人には笑えないかも。

島国単一民族の我らが日本人は、肌の色や宗教で差別をしてはいけないと頭でわかっていても、多種多様な国籍や文化の中に身を置いた経験が圧倒的に不足しているので、差別発言には、つい笑っちゃいけないと心のストッパーが掛かってしまう。それがこの映画の面白さを阻害する。

差別について日本よりも一歩も二歩も進んでいる移民国家だからこそ、明るく軽く笑い飛ばせてしまうのだろう。

そもそも、外国の影響力から脱却し、フランスの独自性を追求すべしというドゴール主義も、カトリック、イスラム、ユダヤのそれぞれの宗教も、僕らはあまりに知らなさ過ぎる。

個人的にアラブ系とユダヤ系の微妙な宗教観の違いや文化の違いがよくわからず、笑っちゃいるけど何だか知ったかぶりしてるみたいな居心地の悪さ。

そりゃ、自民党議員がLGBTのカップルに対して「生産性」がないなどと発言してしまう様な国だもの。

コメディとして面白いのに、人のふり見て我がふり直せと言わんばかりに、日本の差別意識の未熟さを実感してしまって十分には楽しめなかったのが本音。

4人の娘達は美女揃いだし、最後のスピーチはほっこり感動出来るし。

映画は悪くない。観る側の問題なんです。