塔の上のカバンツェル

ニュートン・ナイト 自由の旗をかかげた男の塔の上のカバンツェルのレビュー・感想・評価

3.9
南北戦争下、南軍から脱走し、農民と奴隷を束ね蜂起し、アフリカ系女性と結婚したニュートンナイトの半生を描く伝記的映画。実話。

貧しく虐げられた貧富の者たちと、過酷な人種差別政策の下弾圧されるアフリカ系の人々と共に立ち上がるニュートン・ナイトの放棄と自由州の宣言による、戦時下の出来事と、終戦後のアフリカ系への差別が全く変わらない現実へと直面する後半部の二部構成。

特に"ジョーンズ自由州"という原題が持つ意味が、持たざる者たちが自由へと立ち上がるというニュアンスと共に、アメリカ人にとっての自由…個人が人種・宗教・性別によって差別されず生まれ持った平等の上に生きること、そのためには人々は戦うことも厭わない強い意志を持つこと、
アメリカ人が持ち、アメリカ合衆国の理念に根差す"自由"という信念を垣間見える。

銃規制なども、彼ら個人が持つ自由を守る権利を奪い取るモノだと反発する所以もここにある。

この"アメリカ人"にとっての"自由"が持つ意味が、我々異国民が抱く「自由」より、より強烈なインパクトを持っているという感覚を理解するのは少し難しい。

ニュートンその人の、持たざる者たちと共に戦うという信念にも感銘を受けるが、この映画はより、差別と弾圧のシステムに戦い続けた彼ら歴史に埋もれた人々の足跡を辿る類の映画だ。

戦後、自由を勝ち取った筈の南部には、システムに組み込まれた人種差別と暴力が持たざるアフリカ系の人々を襲う。
戦いはまだまだ終わらずに、ハッピーエンドでお茶を濁さなかった今作品の"戦い続けろ"という強いメッセージ性は、過去に踏みにじられ、消えていった人々への鎮魂歌なのだとも思う。

強い映画だった