MasaichiYaguchi

海難1890のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

海難1890(2015年製作の映画)
3.7
本作を観るまで1890年に起きた「エルトゥールル号海難事故」や1985年の「テヘラン邦人救出劇」について知らなかった。
2部構成になっているこの映画では、前半で「エルトゥールル号」がやって来た理由やどのようなトルコの人々が乗船していたのか、そして海難した時の状況、海難した彼らを日本のどのような人々がどのように助けたのかを描き、後半でイラン・イラク戦争で緊張の高まるテヘランで何故日本人たちが取り残され、自国の救援機ではなくトルコの救援機で助けられたのかを描いている。
9000kmも離れ、言葉も文化も違う「日出ずる国」日本と「月昇る国」トルコが時代を超えて絆を結んだこの2つの出来事を、日本とトルコの素晴らしい俳優たちが壮大なスケールで再現していく。
映画なのでフィクションや演出を織り交ぜたところはあると思うが、実際にあった事の前では取るに足らない事のように思える。
「情けは人の為ならず」を曲解したり、誤った使い方が罷り通るこの頃だが、この作品に登場した日本人もトルコ人も一身を投げ出すようなことをしても一切見返りを求めない誇り高き人々。
このような事を映画的な「綺麗事」と受け止める人もいるかもしれない。
それでも人種も身分も関係なく、人として精一杯の「真心」で窮地や絶望に陥った人々を助けようとした人々がいたことを美しいと思うし、信じたい。
今、世界中がテロに怯え、疑心暗鬼で誰も信じられず、「目には目を、歯には歯を」の復讐の連鎖に捉われている中、この作品で描かれた「真心」のエール交換は暗夜の灯のように感じられる。