シズヲ

御用牙のシズヲのレビュー・感想・評価

御用牙(1972年製作の映画)
3.7
「これで俺とお前は穴兄弟だ……」

屈強なデカマラを持つ一匹狼の役人、カミソリ半蔵!!日々の鍛錬で磨き上げた性技を駆使し、ヒィヒィ喘がせながら悪を追い詰める!!!どういうこっちゃねん。

ファンク調の音楽とスタイリッシュな編集によって始まるオープニングから顕著だけど、時代劇というよりもハードボイルドなアウトロー刑事モノのような雰囲気。丁髷姿の勝新は中々新鮮で、ドスの利いた演技や強烈な眼力も含めてストイックな風格がある。奉行所の欺瞞に憤って啖呵を切る冒頭のシーンは気迫に満ちてて格好良い。凶状持ちの下っ端達との関係はなんとなく後の『警視-K』っぽくて地味に印象的。

“奉行所の上司が一枚噛んでいる悪事を型破りな捜査で暴いていく”という筋書き自体は如何にも不良刑事モノらしいけど、前述したように主人公のキャラクターがおかしい。風呂場で黙々とチンコに湯をかけ、黙々とチンコを棒で叩き、あろうことか米俵にチンコを突っ込んでいく。どうやら戦いに備えてチンコを鍛えているようだ。カミソリ半蔵の朝はチンコの鍛錬から始まる。どういうこっちゃねん。

そして悪と繋がっている美女を無理やり拘束したかと思えば、鍛え上げたチンコで激しい尋問をおっ始める(ヘンテコなオーバーラップ演出が前衛的だ)。チンコで情報を引き出し、女を通じて敵の権力さえも懐柔し、毒を以て毒を制す。それこそがカミソリ半蔵なのだ。色んな意味で容赦なくて毒が強すぎる気がしないでもない。基本的にはハードな刑事モノ+時代劇というフォーマットに則って話が進むのに、要所要所でかなりシュール。吊るした女を床で待ち構えて回転ファックするのは最早凄すぎる。

妙に血生臭い演出が目立つのも印象的で、瓦を粉砕する江戸メリケンサックなど数々の暗器でそれなりの残虐ファイトを見せてくれるのが味わい深い。シモネタを中心に変な描写が散見される作品だが、三隅研次監督らしい洗練された演出も全編に渡って貫かれている。役者の顔面を捉えたクローズアップや煽り視点の映像に加え、江戸の地図を背景にした演出などが鮮烈で面白い。橋の上で雑魚を蹴散らした半蔵が竿兵衛と対峙するカットなんかも格好良い。勝新VS田村高廣という『兵隊やくざ』対決が見れるのもさりげなくニクい(殺陣もバチバチに決まっている)。

そんなこんな言いつつも最終的に一番印象に残るのはやっぱりデカマラ絡みの下りだし、ザ・モップスによるゴリゴリのロックで幕を下ろすラストも含めて「変な映画を見たなあ」という余韻を味わえる。“カオスというほど奇天烈ではないが明らかに何かがヘン”みたいな塩梅だ。あくまで真面目に(?)ハードボイルドをやっているのにチンコの存在感が強すぎる。この頃の邦画、やっぱり現代では絶対に撮れない(というか確実に怒られる)珍妙な狂気がある。
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