監督 トム・ムーア
製作 アイルランド 2014年
原題 Song of the Sea
2016年に日本で公開されたアイルランドの長編アニメ。
アイルランドといえば妖精というイメージがありますが、本作品は、ケルト神話や伝説を元に、灯台で暮らす主人公ベンが妹シアーシャと愛犬クーと共に妖精の世界を救うという冒険活劇であり、それを通して無くした心を取り戻すという優しい愛の物語です。
水彩画で描かれた手触りのある背景や、ケルト文様など幾何学的なデザインが、妖精の住む海や山を神秘的に描いていて非常に美しい。ケルト音楽独特の音色と歌声には、心の原風景を見るような懐かしい気持ちになりました。
すごくオリジナリティのある世界観ですが、ムーア監督はジブリ作品がとても好きらしく、思い起こすとその影響がちらちら見えた気がします。
私は魔女の”マカ"がすごく好きになりました。フクロウの様相で、千と千尋の”湯婆婆”とハウルの”荒地の魔女”を足したような感じで、怖いけど実は悲しい過去を持っている。なぜ怖い魔女になったのか、そこらへんの事情にかなりぐっときました。
近代化するアイルランド社会の中で、影をひそめた神話や伝説に光りをあてたかったという監督の思いが十分に伝わる素晴らしい作品でした。
神話の持つ普遍性や描かれる人間の真理は、時を経て、場所を超えて私達に語りかけてくるのだなと思いました。