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『Politist, adjectiv』に投稿された感想・評価

[ルーマニア、形容詞としての"警察"は…] 80点

コルネリュ・ポルンボユ長編二作目。刑事クリスティは逡巡している。マリファナ売人疑惑のある高校生ヴィクトルの張り込み捜査をしているが、彼は自分用に買っているだけで売人ではなさそうなのに、上層部はヴィクトルを逮捕したがっているのだ。2007年にEUに加盟したルーマニアは、他のEU諸国と足並みを揃えるべく、マリファナの合法化も進むはずだ。冤罪だし大した罪でもないので、ヴィクトルを逮捕したくない…とクリスティは悩み続ける。真犯人が出てきてくれたら全てが丸いんだが、という思いと共に張り込みを続ける様を延々と映し出していく。呆れるほどの長回しの中には、人を待つ空白の時間が多く含まれているが、これはポルンボユの警官の友人から聴いた話らしい。曰く、警察には待機時間とか監視時間といった"死の時間"がある、と。そこには、革命当時14歳で、ここから急速に社会が変わっていくだろう!と胸を膨らませていたポルンボユ少年の、遅々として変化の進まない社会への失望も込められている。

終盤になって、ヴィクトル逮捕に動かないクリスティを呼び出した上司は、彼に辞書を引かせる。良心、法律、道徳のそれぞれの意味を確認し、法律ではなく道徳律を信じるクリスティを諫める。ここで興味深いのは、この前のシーンで古い歌謡曲を聞く妻に対して、歌詞の比喩表現が分からないとしていることだ。"太陽のない海は海と呼べるの~♪"→"海は海だろ"という態度と、法律/道徳をごっちゃにする態度との明らかな矛盾は、ポルンボユの言う"可能性を無視して定義を回避したがる同世代"への眼差しなのかもしれない。反面、辞書による再定義を強要する上司(ポルンボユの言う"共産時代に言葉の誤用を恐れた人々"に相当するのか?)も"形容詞としての警察(Police, Adjective)"の項目で声を荒げるなど、世代間の対立を編み込みながら矛盾を指摘していく。ちなみに、"形容詞としての警察"の辞書的な意味を、この映画自体が皮肉っているのも面白いところ。

ちなみに、2015年に医療用目的の大麻は合法化されている。

追記
色々インタビューを読んでいると、2007年にクリスティアン・ムンジウが『4ヶ月、3週と2日』でパルムドールを受賞してルーマニア・ニューウェーブが一気に注目され、同時期にクリスティ・プイウが『Aurora』を発表していることもあってか、"ヴラド・イヴァノフの起用はムンジウの『4ヶ月、3週と2日』観たからですか?"とか"プイウの『Aurora』も警察署で終わりましたよね?"とか、適当に括られてるのを困惑気味に返しているのが印象的だった。
4.5
【定義を操るときに生まれる暴力】
先日、自分の尊敬する映画人である済東鉄腸さんがエッセイ本「千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話」を出版した。本著を読んでいると、コルネリュ・ポルンボユ監督の『Police, Adjective』についてかなりのページ数を割いて紹介がされていた。出版記念対談配信するにあたって、この映画は観る必要があるなと考え挑戦してみた。コルネリュ・ポルンボユ監督といえば、謎の口笛映画『ホイッスラーズ 誓いの口笛』や金属探知機で宝を探そうとする『トレジャー オトナタチの贈り物。』で知られているのだが、どれもとっつきにくかったイメージがある。しかし、本作は済東鉄腸さんが夢中になるのも納得な作品であった。

高校生の後を延々とつけていく描写から始まる。一通り調査が終わると、上司に報告する。高校生はマリファナを吸っていはいるが、売人ではないようだ。決定的な証拠がないので逮捕はできないと説明するのだが、上司は意地でも捕まえたいらしく、エビデンスを掴んで来いと言う。本作はいわゆる張り込みものである。映画は人生のダイジェストであり、通常であれば張り込みも次々と証拠が出てきて怒涛の展開を迎える訳だが、本作は異なる。何も証拠が見つからず、ただ現場とオフィスを往復する虚無な運動を長回しで撮っていくのである。人生のダイジェストの外側を描く作風である。だが、この長回しが妙に惹き込まれる。例えば、警察官が高校生の家の前をさりげなく通過する。その際に車のナンバーを暗記していて、電話を片手に報告をする。そのまま、道なのかよく分からない場所へと歩いていき、誰かを待つ素振りをみせながら張り込みを継続する。この撮影の芸の細かさに衝撃を受けた。

また、本作の山場は上司から辞書的な定義を読ませられる場面だろう。この一連の流れがこれまた長い。受付で5分近く待たされる。ただ待っている警察官と、事務作業する女性が映し出される。そして上司に呼び出されて、詰問を受ける場面で、彼が「ちょっとルーマニア語の辞書を持ってこい、5分ぐらいで用意できるか」と秘書に連絡する場面があるのだが、これも本当に数分間間伸びした時間が描かれる。この徹底した退屈さに力強さが宿っている。そして、辞書的な意味を読ませて、部下の矛盾を突こうとしてくる。

我々も、日常生活を送る上で、辞書的な定義と感覚的な定義を都合よく切り替えて生きている。実際にこの警察官もその揺らぎの中に矛盾を抱えて生きている。だが、他者をコントロールするため、自分の欲望を満たすために都合の良い定義の切り替えを行うとそこには暴力性が芽生える。そしてその対象にされた者にはブルシットジョブが重くのしかかるのである。

本作は決してルーマニアの警察の話ではなく、日本の会社生活でも頻繁にみられる光景であり、言葉の定義の観点から他者をコントロールする状況を見出したコルネリュ・ポルンボユ監督は凄いなと感じたのであった。

■おしらせ
2/25(土)21時から済東鉄腸さんと配信しますのでよかったら是非!

【 #千葉ルー 出版記念】済東鉄腸さんに訊く!オールタイムベストルーマニア映画10選▼
https://www.youtube.com/watch?v=iS2ccJSsdzM