さすらいの用心棒

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明けのさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

2.8
『スター・ウォーズ』スカイウォーカー・サーガ完結編


初日鑑賞。シリーズへの思い入れはそれはもう半端じゃなく、幼稚園からライトセーバーのおもちゃをぶんぶん振り回して「『スター・ウォーズ』と共にあらんことを」みたいな人生を歩んできて、ようやくその完結編を迎えるのだから感慨はひとしおだ。ただ、そういう想いを切り捨てて一本の映画として見ると、やはりどうしても全体に粗が目立った。内容については下記【ネタバレ】以降で触れるので、とりあえず個人的なことだけ。

まず思ったのが、シーン、カットの繋ぎ方が不自然に感じられたこと。冒頭の複数人の動きを追うシーンからラストまで、この違和感は払拭できなかった。原因としては、1カットごとに俳優にポーズをとらせるか、構図を完成させた途端にカットを切っているためではないかと思う。ひとつの画として完成されてはいるが、映像内で歌舞伎のような見栄を切るとカット毎に妙な間が生じ、非常にテンポが悪くなる。
加えて、JJ監督はやたらにカメラを動かすのが好きらしく、ズームしたり、クレーンやら手持ちで縦横無尽に動き回らせたりするところに、まったく異なる動きをするカットをつなげてくるので見ていて心地よくない(マルチカメラと編集の問題を解決する時間がなかったのか)。ただし、一緒に見た友人は特に違和感はなかったようなので、好みの問題です(笑)

次に、キャラの扱い。これまでの2作品で増えていった登場人物をさばき切れていないの最終作でさらに登場人物を増やして、見せ場を与えられないまま終幕を迎えたキャラのなんと多いことか。大風呂敷を広げた結果としてある程度仕方のないが、前作で大活躍していたローズや、旧作から復活したランド、R2にはもうすこしスポットを当ててもバチは当たらないのでは、と感じる。また、新出のキャラに尺を使いすぎている。新キャラはむしろ出してほしいと思うが、限られた時間では上っ面しか描写されず、実際に魅力を伝えるにはあまりにも時間が不足しているため、このキャラ出す必要あったか、という疑問が何回かよぎった。一作のなかで、それも最終作で唐突に現れて去りゆく彗星のようなキャラたちになぜここまで時間を割けるのかよくわからない。

最後に、ストーリーについて(なるべく内容に触れず)。
『スター・ウォーズ』はそもそも、黒澤明監督を敬愛するルーカスが、『隠し砦の三悪人』といった時代劇をいかにSFに活かせるかという挑戦からはじめたエピソードは有名だが、黒澤もまたアメリカの西部劇をいかに時代劇に取り入れるか、という創意工夫を『七人の侍』や『用心棒』等で重ねており、既存のものを利用して新たなものを生み出す点で二人の巨匠は相通じるものを持っていた。

それがなぜかJ・Jにはない。

『フォースの覚醒』の流れは『新たなる希望』と通底しており、本作『スカイウォーカーの夜明け』もまた『ジェダイの帰還』と同じテーマで、まったく同じシーン構成で、まったく同じストーリーで貫かれている。同じものを別の見せ方で楽しませる、という点では同じだが、あまりにも同じなので、どちらかというとカバー曲に近い。

代わり映えのないストーリーに「やっぱりこうでなきゃ」と興奮するファンもいるのも理解できるし、そうした共通分母を利用せざるを得ない状況を見据えて利潤を求める姿勢は企業として責められるべきではないが、フィルムメーカーを捨てて良いわけではない。これは「新しい見せ方」を提示しただけで「新しいもの」をつくったとは言えない。世にあるほとんどの作品はコピーのコピーのコピーだろうが、そこから脱却する飛躍がオリジナリティを輝かせる。評判があまり芳しくない『最後のジェダイ』ではそれがある程度出来ていた。

同じ内容なら、旧作を見れば充分だろう。

これが『スター・ウォーズ』完結編かあ。

どうしてまたシリーズを始めたのか、と誰かに問い詰めたい。

『スター・ウォーズ』になるには十歩も百歩も足りない。

【ネタバレ】

展開について思ったことをつらつらと。

宇宙空間をバックにタイトルテロップ。そのあとにロールする文章。「死者の口が開いた」の一文のあとに、驚愕の「パルパティーン」の名前があって、ええ!?となった。ここで出すのか、と。旧シリーズで打倒したはずのパルパティーンの復活という劇的な場面を、演出家としては腕の振るいどころである場面を、たった一文で伝えるのか、と。

しかし、パルパティーンはどうして生きていたんだろう。旧作であれだけ皆が努力してきたことは無駄だったんかいな。しかも、全船を撃ち落とすくらいのフォースをもちながら、レイがライトセーバー1本増やしたらあっさり負けるのもよくわからない。手のビームが自分に跳ね返って死ぬのも『帰還』と一緒だし、学習能力ないのか、こいつは(笑)

しかも、薄々予想はしてたけどパルパティーンがレイの出自にある人だとは。ルークがダースベイダーが父親だと知る展開と重なるけど、さすがに二回もやられると飽きてしまう。

あとひとつ。とても神秘的で得体の知れなかったフォースが、いつの間にか瞬間移動や治癒効果とか、今までになかったような振る舞いを見せだして、単なる「魔法」レベルにしか見えなくなったんだけど、これはいったい?

チューバッカ死亡かと思いきやすぐに復活するわ、3POが記憶喪失するかと思えばあっさり復元されるわ、スリルはあるけど、あとになってこの展開はいるのかよくわからないくだりも多い。

ただ、ハン・ソロが登場したシーンでは本当に胸がいっぱいになった。これ見れただけでも良かったかも知れない。

そして、ラスト。

かつてルークのためにベイダーが命を賭して彼を救ったというシーンがあったけど、カイロ・レンも自分の命と引き換えにレイを救うことで憧れの存在だったダースベイダーになれた、という展開は胸アツだった。そのあとにキスするところにハリウッドの悪習が感じられてブチ切れたけど(笑)、あそこだけは認めざるを得ない。