シャチ状球体

殺人捜査のシャチ状球体のレビュー・感想・評価

殺人捜査(1970年製作の映画)
4.5
現時点ではソフト未発売のイタリア映画。

法の番人は常に法を犯さない。法で守られているから。

"元殺人課長の公安部長"が権力を悪用して共産党員や反体制運動、同性愛者をスケープゴートにし、適当な人を犯人に仕立て上げて警察組織のメンツを守る。
実際にいわゆるアカ狩りがどういった意図で行われてきたかを基にした内容で、単純に警察幹部が犯した殺人をもみ消すという以上の批判精神にあふれた映画だ。

公安部長が特別非道なのではなく、権力は上から下に罪や責任が流れて落ちていく仕組みになっているので実は上には上がいる。
誰にどの程度の権力を持たせるかはしっかり考えて、監視し続けないとね……。

『幻想殺人』のフロリンダ・ボルカンが被害者役を演じており、権力に対する自由の象徴のような描かれ方をされているのが印象的。
フリーセックスがこの時代の反権力運動には必要不可欠だったのかもしれない。警察幹部の男性率100%だし、抑圧的ではない恋愛の形を提示することに重要な意味があったのだろう。今見ると男女二元論やごく限られたジェンダー・アイデンティティやセクシャリティの在り様がベースになっているところにとても排他性を感じてしまうので、二世代くらい前の社会運動が紆余曲折を経て今に繋がっていることもよく分かる……。

ちなみに、『サスペリアPART2』で刑事が自販機にお金を入れたのに商品が出てこなくてキレるシーンと似た廊下が出てくるけど、もしかして撮影場所が同じ?
シャチ状球体

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