浦切三語

ボス・オブ・イット・オールの浦切三語のレビュー・感想・評価

4.4
コメディ・ジャンルとしての物語の完成度はめちゃくちゃ高い。しかし見慣れた展開であるのは否めない。その見慣れた物語を「オートマビジョン」という、ハンディとフィックスの中間に位置するような「見慣れないタイミングの連続が引き起こす見慣れない映像」で伝えてくるのでヒッジョーに面白い。もしこれがただのハンディカメラでの手ぶれブレブレなリアル志向の撮影だったり初期のヨーロッパ三部作に見られるかっちりしたカメラワークだったら、ここまで(良い意味で)収まりの悪い映画にはなってない。カメラフレームを自動的に選択してるから会話してる役者の顔は平気で見切れるし、意図不明なアングルが連続することなんてしょっちゅう。しかも意地悪なことに話が盛り上がってきそうなタイミングで観客に冷や水をぶちまけるがごとく、画面外から余計な解説をナレーション形式で付け加えてくるトリアー監督。つまりトリアーは画面構成の奇抜さとナレーションの挿入という2つの手法を使い倒し、この、「誰もが笑って泣ける面白コメディな筋書き」に観客のテンションが翻弄「されすぎないように」コントロールしようと企んでいる。だから何も気にしないで「普通に笑えるコメディ映画」を期待している人からウケが悪いのは当たり前。物語が盛り上がるポイントポイントで、明らかにトリアーがこちらのテンションを沈静化させようとしてくるからね。そこに楽しみを見いだせる「映画マゾ」な方々には心の底からオススメできる一作です。いやあ~面白かったなあ。自動昇降する机と、あのアンジャッシュみたいな勘違いコント風のやりとりは、オチが予想できても笑えてしまうw
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