タランティーノの『トゥルー・ロマンス』の元ネタとされるニコラス・レイ監督の長編デビュー作。
アーサー・ペンの『俺たちに明日はない』など、後の逃避行作品に影響を与えたとされるフィルム・ノワールの代表作をやっと鑑賞。
1930年代、不況下のアメリカ南部。刑務所を脱獄した若者ボウイは、仲間とともに銀行強盗を続けていた。やがて彼はキーチという女性と恋に落ち、人生をやり直すための逃避行を開始するが…
いわゆるフィルム・ノワールらしいクールな部分と、追い詰められるがゆえに燃え上がる愛を描いたロマンティックな部分を併せ持つ作品だけれど、どちらかと言うと後者の部分を強く感じる。
時代背景も大きく関係しているのか、元はと言えば冤罪で収監されていたボウイが夜を生きざるを得なくなった状況には若干同情するも、無駄にイケメン過ぎる?ピリッとしない優男ぶりには正直イライラもする(ココが評価の分かれ目かも)。
一方 芯の強いキーチの冒頭とラストの印象の違い、女性としての成長ぶりは見どころだった。覚悟を決めたラストカットなんて美しさにハッとさせられる。
猛スピードで逃げる車を追った空撮長回しのオープニングでワクワクが高まりガッシリ掴まれ、更には美しいショットたちに見入りフィルム・ノワールの醍醐味を味わいつつも絶えず切なさがついてまわる幸せだったシーン…
悲しくて美しい作品だった。