本当に見て良かったと思う。
生きて進み、至る物語。
陳腐な表現しかできないのが苦しいが、「もう進まないでくれ」と祈りながら見るしかなかった。クミコは前に進み続けてしまうから。
主人公クミコが、「ある」と信じてしまった宝のために大冒険する物語。
ずっとずっと夢を見てるみたいだった。
出来事は折り重なっているのにそれが積み上がらない。全ての決断が過去を含んでいない。
しかし「クミコの夢物語」と「夢」の違いは、常に一本軸のテーマ、トレジャーハンティングがあること。狂気的なのに、それに我々も乗り込むしかないのがこの映画の苦しいところ。
苦しくてうまく見れなくて、映画らしく堂々とBGMが入ると「おい!」と唸るほど肌触りがリアル。
それでいてショットは完璧なシーンが多い。
助けてくれた警察官とレストランで向かい合うシーン。
怒鳴られることが確定している電話を取れない横断歩道のシーン。
そして、雪の中で赤い点ひとつとなったクミコが最後に至るシーン。
意味のある長回しも全部好きだ。衣装も素晴らしい。
クミコは『ファーゴ』のDVDから解放されて、真実にトレジャーハンターになっていた。
苦しいなあ、苦しい。大好き。クミコ、大好き。