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今朝の秋のmasatのレビュー・感想・評価

今朝の秋(1987年製作の映画)
3.0
82年「終わりに見た街」と言うかなりの異色作で初接触し、衝撃を喰らい、翌年「ふぞろい」でまだ遠い(と感じていた)未来へ思いを馳せ、躍動した・・・あの中学生の頃。
その後、「日本の面影」(84)「輝きたいの」(84)「ふぞろい2」(85)「深夜にようこそ」(86)と、リアタイで、いや時にBETAで観ていた。
そんな流れの87年作品、追悼特番で初めて観た。

どことなく山田版“東京物語”の様な始まりの中、ハッキリと豊潤な時代の足音を響かせる、バブル前夜の市井の生活。
当たり前の展開の中、「あなたはイイの?」と言う台詞が、如何にも山田節で響く。
現実を突きつけ合う関係性と可能性。その迷いと怯みと努力。世代とその経験値が静かにクロスし、ぶつかる。
そんな彼らを見つめ包み込もうとする、そう、武満徹の、どことなくレクイエムなのに、ヤケに未来へ響く巨匠の曲が圧巻。
病院を抜け出したタクシーの走るカット、それだけで涙が出る。

花火が打ち上がれば、手元の線香花火が落ちれば、もう夏は終わる。
しかし、不思議な“恋心”が彷徨う、あの夏の“錯覚”は、そこに永遠に遺った訳だ。
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