一人旅

エンドレス・ポエトリーの一人旅のレビュー・感想・評価

エンドレス・ポエトリー(2016年製作の映画)
4.0
アレハンドロ・ホドロフスキー監督作。

サンティアゴを舞台に、詩人志望の青年:アレハンドロの別れと旅立ちを描いたファンタジックなドラマ。

チリ出身の鬼才:アレハンドロ・ホドロフスキーが自身の実体験を基に描いた半自伝的内容の傑作『リアリティのダンス』(2013)の3年越しの続編となる幻想的人生譚で、前作は故郷トコピージャにおける主人公アレハンドロの少年時代を描きましたが、本作では首都サンティアゴに移り住んだ青年アレハンドロと彼を取り巻く人々の関わり、そして新たな人生に舵を切っていく主人公の旅立ちまでを描いています。

前作同様ホドロフスキー節炸裂の続編で、前作の少年期から精悍な顔つきの青年へと成長した主人公アレハンドロ(モデルは当然ホドロフスキー監督自身)の、支配的な父親との確執、芸術家達との邂逅と交流、母親に瓜二つな女性との初恋の顛末を、現実と幻想をない交ぜにしたユニークな光景の中に綴っています。

ホドロフスキーが作り出す独創的世界を眺めるだけで惹き込まれてしまう作品で、画面にナチュラルに入り込み出演者の動作を手助けする“黒子”の存在や、主人公以外の客が全員テーブルに突っ伏している不思議なバー、パネル化された多数の登場人物が主人公を見送る港の風景等、ホドロフスキーの脳内イメージを自由に可視化した映像が鮮烈であります。中でも骸骨の衣装と鮮やかな赤色の衣装を身に纏った大勢の人々が踊り狂うカーニバルは圧巻の一言で、ホドロフスキー流色彩美学の到達点を目撃することができます。

主演は監督の末の息子:アダン・ホドロフスキーで、主人公の父親役は監督の長男:ブロンティス・ホドロフスキー。そしてオペラ歌手でもあるパメラ・フローレスが前作に引き続き台詞がオペラ調になってしまう母親と、主人公の初恋相手を一人二役で怪演しています。
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