Clara

真夜中のゆりかごのClaraのレビュー・感想・評価

真夜中のゆりかご(2014年製作の映画)
3.0
幼い子供を突然死で失った刑事。妻のパニックと我が子を手放すまいとする必死さに困惑し、仕事中に発見した薬物依存の親に育児放棄された赤ん坊のことを思い出す。そして、必死さと赤ん坊を思う気持ちのあまりに、我が子の亡骸をすり替えてしまう。

久々にフランス映画を観たのだけれど、やはり鋭いところを突いてくる。
常識的に、型にはまった考え方をすれば、考える余地もなく刑事が下した決断は「悪」となる。でも、「本当に?本当にそうなの?それでいいの?」と問いかけることも時には必要だと思わされる。
突然死の原因は終盤で明らかになるのだけど、一見、育児の苦労が原因のようにみえる。しかし、もっと究極の、言葉にされない根本的な問題を提示しているように思えた。そもそも、親になることに不向きな人間が存在するということを。苦しさに耐えられない人、そこにある命に目や意識が向かない人…パターンはいくつかあるだろう。でもそれは、見かけではわからないものだということも。

刑事の決断の善悪。これもまた状況によっては、十分に間違った判断をする可能性があるということ。目の前の赤ん坊を放っておけば、きっとそう遠くない将来に死んでしまうと考える。父親がろくでもなく、母親が父親に暴力を振るわれ、自由を奪われた状況だったら…母親にたとえ子育ての意志があったとしても、このままでは赤ん坊も暴力を振るわれるようになる…そんな状況を前にしたときに、我が子を失ったら?「代わりに育ててあげよう、それはいいことだ」と思ってしまう可能性はある。そしてそれが、本当に本当に悪いことなのかと問われている。簡単そうで実は難しい問いかけかもしれない。
でも最後に刑事がとった行動による結果を見れば、この作品の中で一つの答えが提示されていて、納得す人も多いだろうと思う。
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