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ヴィクトリアのn0701のネタバレレビュー・内容・結末

ヴィクトリア(2015年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

ヴィクトリアは目の眩むようなフラッシュとうるさい音楽が鳴り響くクラブの店内で、慣れない外国語を話し、強い酒を飲み、翌日もカフェで仕事だというのに踊っている。

彼女は夜を楽しみたいだけだ。

店を出ようとしたところを四人組の「如何にも」な男に呼び止められ、外に出る。若い男女はコンビニのような店内から酒を持ち出し、マンションの屋上で酒を飲む。

ヤバイことが起こらないわけがない。彼らの人生はおよそ120分で百八十度変わる。

四人の男のうち「ボクサー」は出所したばかりの厄介者。彼は、獄中で借りを作った見返りに、マフィアから銀行強盗を依頼される。

何も関係のなかったヴィクトリアだが、本来、運転手をするはずだった男が酔い潰れて動けなくなった代わりに、運転手役として犯罪に加わるように説得される。

ヴィクトリアはカフェでピアノを弾くただの店員だ。それが一夜にして大罪人。しかも、彼女のピアノはプロ並みに上手い。1日7時間練習を続けた賜物だ。

だが、人生は分からない。

たった一夜の安易な判断が人生を転落させる。これは教訓だ。まぁ映画は常に教訓だが、結構大事なことだ。

危ない道には進まない。
それは自己責任だからだ。

彼らの安易な判断は、計画性のない銀行強盗に繋がり、四人のうち、三人が死亡または病院送りとなる。

ヴィクトリアはひとり死んでいった男をホテルに残し、誰もいない朝方の道を歩いていく。彼女に残された道は、多くない。

全編ノーカットではなく、「全編ワンカット」というところがミソだ。別にカットはあるのだろう。

物語としては、他国から来た不遇の女がチャラい男と遊んでいるうちにやばい事件に巻き込まれ、銀行強盗までしてしまうというシンプルな話だ。

だが、表現方法として、銀行強盗に浮かれた全員がクラブですっかりハイになった後で一歩外に出ると、もう警察が乗り捨てた車を見つけている様子は、静と動のコントラストを鮮やかに表している。

銃撃戦や緊迫の場面、ピアノの演奏シーンでさえ、普通の映画ならなんてことのないシーンなのに、一層ピリッと緊迫した空気が流れる。言わばドキュメンタリーに似たリアルさが出ている。

このドキュメンタリーと映画の境を取っ払うかのような試みは非常に面白い。

冒頭から流れる不穏で不吉しかない空気も、マフィアとの理不尽な交渉も、常に「今」であり、先の読めない焦燥感が漂っている。言わば、台本の存在がないかのようだ。

あまり、評価は高くないかもしれないが、映画としてとても面白い。
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