えんさん

インフェルノのえんさんのレビュー・感想・評価

インフェルノ(2016年製作の映画)
3.0
宗教象徴学者のラングドンは、ある夜、フィレンツェの病院で目覚める。ベットの上に寝かされ、身体には点滴チューブなどが刺され、頭も負傷していた。なぜ、遠い異国の病院にいるのか、記憶も定まらない中、突然謎の女の急襲を受ける。ラングトンの担当医シエナ・ブルックスと逃げ延びたが、追っ手の追撃は止まない。朧気な記憶を辿っていく中で、ウィルスで人類滅亡をもくろむ生化学者ゾブリストがダンテの叙事詩『神曲』地獄篇に隠した暗号に対峙し、その謎に挑むこととなっていく。。ダン・ブラウン原作、ロン・ハワード監督によるミステリー映画「ダ・ヴィンチ・コード」「天使と悪魔」に続くシリーズ第3弾映画化作品となっています。

今では数多くの作品を観るようになって、なかなか原作ものがある映画作品を、原作を読んでから観るということはなくなってきましたが、唯一、その習慣を守っているのが、本作へと続いているダン・ブラウンのラングトンシリーズ。一作目の「ダ・ヴィンチ・コード」は原作も面白かったし、映画も興奮した。なにせ、ダン・ブラウンの小説の凄いところは、古代や中世の歴史や遺物、美術作品に謎を隠し、その謎や陰謀を巡る物語を、あたかも現実のように追っていくところ。もちろんフィクションの部分もあるのですが、世界史としては正しい本流をなぞりながら進むこともあり、歴史好きな僕にとっては凄く興奮する物語になっているのです。それに単純に歴史ものとして終わらせるのではなく、歴史の上に続いている現代の人の想いもミステリー・ドラマとして魅せることも忘れない。「ダ・ヴィンチ・コード」でのコレ捜査官と祖父との隠された秘密をたどる物語や、「天使と悪魔」でのカメルレンゴが追い求めた幼き野望など、ドラマとしての見どころも多く、映画は特に数々の遺跡・美術作品の造形や、歴史部分へのカットオーバーさせる工夫など、味がある作りになっているところも楽しいところなのです。

という期待を込めての、映画化第3弾。今回も原作を読み終えてからの鑑賞でしたが、、いささか期待外れ感が強かったというのが正直なところです。まず、原作とラストが違うのが衝撃というか、過去2作品にも変えてある部分はあったのですが、映画として成立させるいい展開になっていたことが多い変更だったのに対し、本作の大幅な違い(結末を変える)というのはかなりガッカリした部分です。まぁ、よくよく考えると、原作では事件の顛末そのものが非常に説明調で分かりづらいし、エピローグも長くなってしまう可能性もあったかなと思います。それに原作通りなら、結末の味わいは非常に「ダ・ヴィンチ・コード」に近くなるので、あえて3作品の違いを明確にするために、スピーディな終わり方を選択したかもしれません。それならそれで、もう少しシエナの背景を明確にし、彼女がなぜあの選択をしたのかというところに焦点を当ててほしかったかなとも思います。スピーディになった分だけ、彼女のキャラクター像が原作に比べ、だいぶ薄くなってしまったように感じます。

ただ、過去2作品と同様、映画として映像化されることの面白さもあったのも事実。フィレンツェやヴェネツィアでの名作や素晴らしい情景を背景にしての逃走劇は、やはり原作を読んで想像していたことをそのまま絵をして動いている楽しさはあるし、謎解きのシーンなどのラングトンの明晰な分析は映像にしたほうが分かりやすいというところもあります。だからこそ、なぜ、、、という想いが更に強くなってしまう、シリーズ第3弾作品でした。。