ちろる

光をくれた人のちろるのレビュー・感想・評価

光をくれた人(2016年製作の映画)
4.1
皆が心のどこかで傷ついているから眼差しは寂しげで清らかだ。
そこは小さなお家と海を照らす灯台だけの2人だけの小さな島。
2回の死産を経験したせいでひな菊のような可憐で明るいイザベルは暗く塞ぎ込み、そんな折り、島の周りを漂流していた小さなボートにドイツ人の男性と泣き叫ぶ女の子の赤ちゃんが寝そべっている。
まるで現代の御伽噺のような展開に戸惑いつつもその後の3人だけの穏やかな暮らしの情景は完璧で美しいから、後半この赤ん坊の謎が解明されるあたりからの運命の残酷さは辛いし、その出来事の裏にあるハナのエピソードもしっかりと描かれていてとても切ない。
レイチェル ワイズ演じるハナの険しい顔の中に沢山の背負いきれない悲しみが溢れていてそんな彼女の目線に立って観返してみればまた、違った複雑な感情が見えてくるのもこの作品の良さでもある。

実直すぎるトムが、運命の糸が引き合うかのように出会ったチャーミングなイザベルに恋をして、やがて愛に変わっていく2人の文通の言葉たちがとても詩的で好きだった。
映画作品であらゆる恋文を目にしてきたつもりだけど、ここまでうっとりとロマンチックな文章は見たことがない。
むしろ手紙だけではなくまるで悟りを開いたかのように始終穏やなトムの台詞全てが美しくて、なにもかもを一度諦めた男が光を見つけてまた命を与えられたような喜びが滲み出ていた。

この手の色んな作品で観てきた感情とはまた別で、描かれてるのはトムの無償の愛そのもの。
この共演をきっかけにしてお付き合いして結婚した2人とだけあって息もピッタリな2人のなんでもないシーンでの表情が微笑ましくてずっと観ていたかった。
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