ゴトウ

仮面ライダーW(ダブル)RETURNS 仮面ライダーアクセルのゴトウのレビュー・感想・評価

3.7
『W』のスピンオフなら間違いないでしょう。一本まるまる照井竜=仮面ライダーアクセルでもやれるくらい魅力的なキャラクターなので、地上波でできなさそうなダークな描写を交えつつ、翔太郎/フィリップを主役に据えたテレビシリーズでは描ききれなかったテーマをやっていて蛇足感もない。トライアルメモリによるパワーアップも単なる上位互換というわけではなく、今回のブースターにしても戦術変更のためのカードという感じ。仮面ライダーは「最強フォーム」「最終フォーム」みたいな呼称が常態化しているけれど、こういうふうに死に形態が出ないパワーアップは理想的な気がする。

生身アクションやワイヤーなど、坂本監督が撮るライダーではお馴染みの演出もハマっていて、香港ノワール(大して観たことないけど)チックな雰囲気とか、ジャッキーチェン的な殺陣だったりとか、テレビでやるより趣味丸出し。エターナルの方はエロ方面で趣味丸出しだったけど、こちらでは長澤奈央がすっかりエロ要員みたいにされてる以外は抑えめだった印象。フランク・リリィは本当に愛されサブキャラだね。融通が利かなくて感情が表に出ない竜と、顔芸叫び芸しまくりで性的な要素を感じさせないヒロインだった亜樹子の夫婦関係の危機を描くことで、「こいつはこんなこと言わないだろ」を避けつつキャラクターの描写に厚みが加わっていて素晴らしい。無意識にモテてしまうけれど気遣いができない(しない)で、それがかえって魅力的に見えてしまう…ってまさしく翔太郎がなりたい「ハードボイルド」だよな…。ギャーギャーうるさい亜樹子も嫌いになりそうなもんだけど、最後には竜くんと仲直りできてよかったね…とちょっとホロっと来てしまう。やたらエロい敵幹部とかゲストがいたけれど、その誰よりも明るくて元気な亜樹子は唯一無二のヒロインだったなと再確認。

「俺、参上」的な深い意味のない決めゼリフのようだった「振り切るぜ」が、暗い過去を目を背けることなく受け入れて前進するという竜の生き方、そして自分を卑下してきた葵にとっての希望になる締めも熱い。ブースターで亜樹子を助けるくだりはほっといてもガンナーユニットなりリボルギャリーなりが助けにくるところだろと思わなくもないし、ガイアメモリのアダプター周りも「メモリってドーパントの体内に吸収されてるんじゃないの?」「アダプタが女の子が引っ張って取れるレベルってどうなの?」とかツッコミどころもある。後付けすると無理が出てくるのは致し方ない部分ではあるし、ドラマ部分が盛り上がってるからいいんですけどね。復讐鬼だった照井を変えたのは翔太郎やフィリップをはじめとする街の人々との関わりであって、なにも亜樹子だけのおかげではないはずなのだが、そこを上手に愛の言葉にすり替える照井。不器用なようでいて女性を丸め込むのが上手い…。

ジャッキー風アクションをこなすなだぎ武が特に好きな場面。本編で出なかった刃野刑事の頼りになる側面も見えて良い。
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