川田章吾

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリーの川田章吾のレビュー・感想・評価

4.2
映画版と合わせて3回目の鑑賞。
『モンスターズ・ユニバーシティ』『ひゃくはち』で描かれているように、この作品も負け犬たちの生き様に焦点を当てた作品。もう、それだけで老子・荘子ファンとしては、すごく楽しめた。

アートって、夢を見せるっていう側面もあるから、どうしても「勝者の側」から語られることが多い。それはマルクスが経済が社会や文化を動かしていると断じたように、私たちの歴史や文化はつねに勝ち組である武士や天皇の視点から論じられ、市井の人々の泥臭さはそこになかった。

ただ、この『ローグ・ワン』という作品は、スターウォーズでは語られてこなかった「名もなき英雄たち」に焦点を当て、彼・彼女らの生き様を描いているところに粋を感じるのだ。
特に、物語も去ることながら、役者陣の泥臭さが最高だよ。ドニー・イェンとチアン・ウェンのコンビ、K2-SOのドロイドらしからぬ生意気具合、リズ・アーメッドのビビリ具合…まさに輝しくないメンバーの奮闘するその様に落涙。

前半の劇的な物語がないから、成長が見られないという批判もあるけど、もしもこれを劇的に描いてしまうと『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』的なテイストにチューニングされてしまい、この物語のメッセージ性は崩れてしまうと思う。
俺たちに物語なんてない。ただ、意味もない戦いの中で培われた「腐れ縁」のために、共に戦う姿こそ彼らにピッタリなのだ。

そして、負け犬たちに光が当たりそうになったまさにその時、地平線から現れる「デス・スター」の絶望的な姿。
こここそがこの物語の本当のドラマが生まれるシーンであり、ギャレス・エドワーズ監督の作品群の中でも一番の名シーンだと思う。

シリーズ7-9が本当にクソだったけれども、ディズニーになって、この作品が生まれたことで、とりあえずは全て帳消し。JJエイブラムスはギャレス・エドワーズの爪の垢を煎じて飲め!
川田章吾

川田章吾